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第28話 『崖下ダイブ』

 崖。


 追跡部隊。


 逃げ場なし。


「……どうする」


 俺が呟く。


 答えは、ほぼ決まっていた。


⸻


「飛びましょう」


 リゼが言う。


「いや軽く言うな!?」


「でも他にないよ」


「それはそうだけど!」


⸻


「囲まれます」


 騎士が剣を構えたまま言う。


「ここで戦うのは不利です」


「……勝てない?」


「時間稼ぎはできます」


「勝てねぇんじゃねぇか!」


⸻


「話は終わり?」


 追跡部隊の一人が前に出る。


 黒い外套。


 鋭い目。


「大人しく戻ってください」


「嫌だって言ったら?」


「拘束します」


「やっぱりな」


⸻


「特に」


 女の視線がリゼへ向く。


「その個体は最優先対象です」


「……っ」


 リゼの肩が少し震えた。


⸻


「下がってろ」


 俺は前に出る。


「君では勝てません」


「やってみなきゃ分かんねぇだろ」


「分かります」


 淡々としている。


 だから余計怖い。


⸻


「……時間切れね」


 看守長が小さく呟いた。


「飛ぶわよ」


「マジで!?」


「他にある?」


「ない!」


「じゃあ決まり」


⸻


「待ってください」


 追跡部隊が動く。


「確保——」


⸻


「今!!」


 騎士が叫んだ。


⸻


 同時に、剣が閃く。


 ガキィン!!


 追跡部隊の動きを止める。


「走ってください!」


「お前も来い!」


「当然です!」


⸻


 崖へ。


 全力で。


「ほんとに飛ぶのか!?」


「今さら!」


 看守長が笑う。


「人生で一回くらいあるでしょ!」


「ねぇよ!!」


⸻


「来ます!」


 背後。


 魔法陣。


 光が集まる。


「まずい!」


⸻


「跳んで!!」


 リゼが叫んだ。


⸻


 ——ドンッ!!


 爆発。


 地面が吹き飛ぶ。


「うおっ!?」


 バランスが崩れる。


⸻


 そのまま——


 落ちた。


⸻


「うわあああああっ!!」


 風。


 浮遊感。


 重力。


 全部が一気に来る。


⸻


「ちょ、これ死——」


⸻


 ドボォン!!


⸻


 冷たい。


 息ができない。


 流れが速い。


「っ!!」


⸻


 川だ。


 流されてる。


「げほっ……!」


 なんとか顔を出す。


「リゼ!!」


⸻


「こっち!」


 少し先。


 リゼが流されながら手を振っている。


「無事か!?」


「たぶん!」


「たぶん!?」


⸻


「前見てください!」


 騎士の声。


「岩!!」


「え」


⸻


 ゴンッ!!


「っっ!!」


 脇腹に直撃。


「ぐっ……!」


 痛ぇ!!


⸻


「大丈夫!?」


 リゼが近づく。


「だ、大丈夫じゃねぇ……!」


「血!」


「マジかよ……」


⸻


 流れが強い。


 止まれない。


 しかも——


「まだ来てる!」


 看守長が叫ぶ。


 崖の上。


 追跡部隊の光。


「しつこすぎるだろ!!」


⸻


「下流へ!」


 騎士が言う。


「この先に岸があります!」


「なんで知ってるんだよ!」


「地図を見ました!」


「有能!!」


⸻


 流される。


 ひたすら。


 息が苦しい。


 体も痛い。


⸻


 でも——


 まだ終わってない。


⸻


「……あ」


 リゼが呟いた。


「どうした!?」


「前……!」


⸻


 川の先。


 見えたのは——


 巨大な滝。


⸻


「……は?」


⸻


 終わった。


 そう思った。


⸻


「マジで死ぬってぇぇぇぇ!!」

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