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第27話 『追跡者たち』

 夜空の向こう。


 白い光が、一直線にこちらへ近づいていた。


「……マジで来てるのか」


「ええ」


 看守長の顔から、いつもの余裕が少し消えている。


「しかも結構本気」


「笑えねぇな」



「距離は?」


 騎士が即座に確認する。


「おそらく数分」


「早すぎませんか」


「監獄長が動いたんでしょうね」


「……」


 あの女。


 本当に敵なのか味方なのか分からない。



「とにかく移動よ」


 看守長が言う。


「ここは開けすぎてる」


「どこ行く?」


「森の奥」


「追跡撒けるのか?」


「完全には無理」


「おい」


「でも時間は稼げる」



「……走れるか?」


 俺はリゼを見る。


「うん」


 頷く。


 でも、少し疲れているのは分かった。


「無理するなよ」


「してない」


「嘘下手か」


 少しだけ笑った。



「行くわよ!」


 看守長が先頭に出る。


 俺たちは森へ飛び込んだ。



 枝をかき分ける。


 足場は悪い。


 暗い。


 でも止まれない。



「右!」


 騎士の指示。


 即座に曲がる。


「……慣れてるな」


「追跡訓練は受けています」


「便利すぎる」


「褒め言葉として受け取ります」



 後方。


 光が増えた。


「……数、多くないか」


「本気で回収しに来てるわね」


 看守長が舌打ちする。


「特にリゼ」


「……」


 リゼが少しだけ俯く。


「お前のせいじゃない」


「でも——」


「今それ考えるな」


「……うん」



 その時。


 ビュンッ!!


「っ!?」


 横の木が吹き飛んだ。


「魔法!?」


「伏せて!」


 騎士が叫ぶ。


 全員しゃがむ。



 ドォン!!


 爆発音。


 土が舞う。


「うおっ!?」


「派手すぎるだろ!」



「警告のつもりね」


 看守長が言う。


「次は当ててくるわよ」


「十分怖ぇよ!」



「……止まってください」


 森の奥から声。


 女の声。


「抵抗しなければ危害は加えません」


「完全に嘘のテンプレじゃねぇか」


「ええ、普通に危険よ」



「どうする!?」


 俺が聞く。


「走るしかない!」


 騎士が即答。


「このまま東へ!」


「東?」


「街があります!」


「マジか!」


「ただし——」


「ただし?」


「見つかると終わりです」


「どっちにしろ終わりかけてる!」



 再び走る。


 息が切れる。


 足が重い。


 でも——


 止まれない。



「……っ」


 リゼが少しよろけた。


「おい!」


「大丈夫……!」


「全然大丈夫じゃねぇ!」



 咄嗟に手を掴む。


 支える。


「走れるか」


「……うん」


「無理なら言え」


「言ったら止まるでしょ」


「止まる」


「だから言わない」


「お前なぁ……」



 その時。


 看守長が急停止した。


「待って」


「どうした!?」


「前」



 森が開ける。


 崖だった。


「……は?」



 下には川。


 かなり高い。


「行き止まりかよ!」


「違う!」


 騎士が叫ぶ。


「川沿いに道があります!」


「でも降りれねぇだろこれ!」



「……なら」


 看守長が笑った。


 嫌な笑みだった。


「飛ぶ?」


「却下!!」



 だが——


 背後の光が近づいている。


 もう時間がない。



「選びなさい」


 看守長が言う。


「追手に囲まれるか」


「飛ぶか」


「極端すぎるだろ!!」



「……飛ぶ」


 リゼが言った。


「は!?」


「今ならいける」


「何を根拠に!?」


「なんとなく!」


「一番危ないやつ!」



 その時。


 背後から声。


「——見つけました」



 追跡部隊。


 黒い装備の女たち。


 数は——六。



「終わった……!」


「まだよ」


 看守長が笑う。


「ここからが楽しいの」


「お前だけだよ!!」



 騎士が剣を抜く。


「時間を作ります」


「無茶だ!」


「元々得意です」



 空気が張り詰める。


 逃げ場なし。


 追手あり。


 崖あり。



 そして——


 選択の時間が来る。

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