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第25話 『監獄島突破』

 監獄長の指先。


 示されたのは——


 リゼが見つけた場所とは、微妙にズレた位置だった。


「……どっちだ」


 思わず呟く。



「信じて」


 リゼが言う。


「私は見えた」


「……」


「でも」


 監獄長が笑う。


「その“見えた”場所こそ、結界が見せてる偽ルート」


「……!」



「結界は判断する」


 静かな声。


「なら当然、“誘導”もする」


「……クソすぎるだろ」


「賢いって言ってほしいな」



 時間がない。


 警報は鳴り続けている。


 見回りも近い。



「……どうする」


 騎士が聞く。


「決めてください」



 俺はリゼを見る。


 監獄長を見る。


 そして——


 考える。



 監獄長は何度もヒントをくれた。


 意味深に。


 試すように。


 でも——


 今まで、一度も“直接邪魔”はしていない。



「……リゼ」


「うん」


「結界、今どうなってる」


「……動いてる」


「どっちに」


 リゼは目を閉じる。


 数秒。


 そして——


「……監獄長の方」


「……!」



 確信した。



「全員、ルート変更!」


「了解!」


 騎士が即動く。



「こっちだ!」


 監獄長が示した位置へ走る。


 壁際。


 一見、何もない。


 でも——


「……ここ」


 リゼが呟く。


「薄い」



「今しかない」


 監獄長が笑う。


「急ぎな」



 ズン——!!


 背後で圧が動く。


 結界が戻ってくる。


「来るぞ!!」



「騎士!」


「はい!」


「先行け!」


 騎士が飛び込む。


 ——抜けた。


「クリア!」



「リゼ!」


「うん!」


 続く。


 一瞬、空間が揺れる。


 でも——


 通れた。


「いける!!」



「次、俺!」


 全力で走る。


 圧が迫る。


 背中に重い感覚。


「……っ!!」



 バチバチッ!!


 結界が火花のように弾ける。


「うおおおおっ!!」


 そのまま——


 突っ込む。



 一瞬。


 世界が歪んだ。


 音が消える。


 視界が白くなる。



 そして——


 抜けた。



「……はぁっ!」


 地面を転がる。


 冷たい土。


 草の匂い。


「……外……」



「まだよ!」


 監獄長の声。



 振り向く。



 看守長が、まだ内側にいた。


「っ……!」


 結界が戻る。


 速い。


 まずい。



「看守長!!」


 俺は叫ぶ。



 でも——


 看守長は笑っていた。


「ほんとギリギリね」


「早く来い!!」


「言われなくても!」



 結界が閉じる。


 あと数秒。


 いや、一秒もない。



 その時——


 監獄長が前に出た。


「……え?」



 スッ、と。


 結界へ手を伸ばす。



 空間が止まった。


「……!」



「行きな」


 監獄長が言う。


「今なら通れる」



「お前……!」


 看守長が目を見開く。



「最後くらい、サービス」


 監獄長は笑う。


 でも——


 その腕が、少しずつ光に削られていく。



「急げ!!」


 俺が叫ぶ。



 看守長が走る。


 結界へ。


 そして——


 飛び込んだ。



 次の瞬間。


 バァンッ!!


 結界が完全に閉じる。


 衝撃。


 風。


 静寂。



「……」


 誰も喋らない。


 ただ——


 そこに立っていた。


 監獄島の“外”に。



「……出れた」


 リゼが呟く。


 信じられないみたいに。


「ほんとに……」



 騎士が膝をつく。


「成功……した……」


「マジかよ……」


 俺もまだ信じられない。



 看守長が息を吐く。


「疲れた……」


「ギリギリすぎるだろ」


「スリルあったでしょ?」


「寿命縮んだわ!」



 そして——


 俺は振り返る。



 結界の向こう。


 監獄長が立っていた。



「……なんで助けた」


 聞こえないはずなのに、呟く。



 監獄長は、小さく笑った。



 そして——


 口だけ動かす。



『次は、外で』



 その瞬間。


 結界が完全に閉じた。


 もう、向こうは見えない。



 でも——


 終わりじゃない。



 これは。


 ようやく始まっただけだ。

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