第24話 『偽装と開口』
夜。
風が止んだみたいに、世界が静かだった。
「……始める」
俺の声で、全員が動く。
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水路の奥、制御室。
いつもの場所。
でも——
今日は“最後”だ。
「配置」
騎士が低く告げる。
「見回り、予定通り巡回中」
「よし」
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看守長が振り返る。
「じゃあ行ってくる」
「派手にな」
「任せなさい」
にやり、と笑って——
消えた。
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数秒。
静寂。
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——ドンッ!!
遠くで爆音。
「始まった!」
リゼが目を閉じる。
「……感じる」
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警報。
今度は“別の場所”から。
「いいわね……」
俺はレバーに手をかける。
「今だ」
カチッ。
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ゴォォォォン——!!
装置が唸る。
水が流れを変える。
圧が、空間に伝わる。
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「どうだ!?」
「……分散してる!」
リゼが叫ぶ。
「結界が、あっちに引っ張られてる!」
「よし……!」
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「第一段階成功」
騎士が言う。
「次、移動します」
「行くぞ!」
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通路を駆ける。
夜風。
警報。
全部が混ざる。
「こっち!」
騎士が先導。
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外壁前。
あの場所。
「位置、確認」
「うん」
リゼが手を伸ばす。
「……ここ」
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「準備いいか」
「いつでも」
「よし——」
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「突入!」
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騎士が先に飛び込む。
空間を抜ける。
「通れた!」
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「次、リゼ!」
「うん!」
リゼが続く。
結界をなぞるように——
抜ける。
「いけた!」
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「……よし!」
俺はレバーから手を離す。
全力で走る。
「次、俺——」
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その瞬間。
ズン——
「!?」
空気が、変わる。
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「……来る!」
リゼの声。
「何が!?」
「結界が——」
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ゴォン!!
圧が戻る。
さっきより速い。
「はやっ!?」
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「急げ!」
騎士が叫ぶ。
「戻ってきてます!」
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「くそっ!」
俺は突っ込む。
結界へ。
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——バチッ!!
「っ!?」
弾かれた。
体が後ろに吹っ飛ぶ。
「……っ、いてぇ……!」
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「ダメ!」
リゼが叫ぶ。
「もう閉じてる!」
「……そんな」
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「戻りが早すぎる!」
騎士が言う。
「想定より上です!」
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「……まだよ」
リゼが言った。
「まだ終わってない」
「どうする!?」
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「もう一回開く」
「は!?」
「無理だろ!」
「無理でもやる」
顔を上げる。
完全に覚悟決まってる目。
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「……やるぞ」
俺は言った。
「もう一回だ」
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「待って」
その時——
リゼが首を振る。
「違う」
「何が」
「このままじゃダメ」
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「……見えた」
「は?」
「結界の“癖”」
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「癖?」
「うん」
「戻る時」
「一瞬だけ——」
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「“遅れる場所”がある」
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「……!」
全員が止まる。
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「ほんとか!?」
「見える」
「どこだ!?」
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リゼが指を指す。
ほんの少しだけズレた位置。
「ここ」
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「……」
俺はその場所を見る。
信じるしかない。
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「いくぞ」
「うん」
「今度こそ——」
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その時。
「そこじゃないよ」
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声。
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振り向く。
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監獄長が立っていた。
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「そこは“フェイク”」
「……!」
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にやりと笑う。
「本命は——こっち」
指差したのは、さらに奥。
見えない位置。
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「……なんで教える」
俺が睨む。
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「決まってるでしょ」
監獄長は言った。
「最後くらい、ちゃんと見たいから」
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空気が止まる。
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選択。
信じるか。
無視するか。
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答えは——




