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第23話 『最終準備と偽装の理屈』

 倉庫の床に描かれた図は、前よりも複雑になっていた。


「……まとめるぞ」


 俺は深く息を吐く。


「今回の鍵は三つ」


 指を立てる。


「誘導」


「分散」


「そして——偽装」



「結界は“判断する”」


 リゼが静かに言う。


「侵入かどうかを」


「そう」


 俺は頷く。


「だから逆に——」


「侵入じゃないって思わせる」


「正解」



「具体的には?」


 騎士が聞く。


「どうやって騙すんですか」


「……そこが一番厄介なんだよな」


 俺は図を指す。


「結界は“異常な流れ”に反応する」


「うん」


「だから」


「先に“別の異常”を作る」


「……!」



「看守長」


「はいはい」


「派手にやれ」


「任せなさい」


 ニヤリと笑う。


「一番得意なやつね」



「で、その間に」


 線を引く。


「俺が装置を動かして」


「結界の反応をズラす」


「うん」


「そして——」



「私がタイミングを取る」


 リゼが言った。


「そう」


「“ここなら通れる”って瞬間を作る」


「……できるか?」


「やる」


 迷いなし。



「そして最後」


 俺は全員を見る。


「突破」


「……」


「順番はこうだ」



「一番手、騎士」


「はい」


「先行してルート確保」


「了解」



「二番手、リゼ」


「うん」


「結界の変化を見ながら突入」



「三番手、俺」


「……」


「装置をギリギリまで操作して、すぐ抜ける」



「最後、看守長」


「最後なのね」


「一番危ない役だ」


「いいじゃない」


 軽く笑う。


「嫌いじゃないわ」



「……本当にいいんですか」


 騎士が言う。


「この順番」


「問題あるか?」


「最後は危険です」


「だからだよ」


 俺は看守長を見る。


「一番対応力あるのはこいつだ」


「評価高いじゃない」


「不本意だけどな」



「……ねぇ」


 リゼが言う。


「これでいけると思う?」


「……」


 一瞬だけ考える。


 正直に言えば——


 ギリギリだ。


 でも。



「いける」


 俺は言った。


「やるしかない」



 リゼが小さく笑う。


「うん」


「いける」



「……最終確認」


 騎士が言う。


「途中で異常が発生した場合」


「無理せず撤退」


「それは無理だな」


「してください」


「善処する」


「信用できません」


「だろうな」



「いい?」


 看守長が言う。


「一瞬よ」


「分かってる」


「欲張ったら終わり」


「分かってるって」



「……ねぇ」


 リゼが俺を見る。


「うん?」


「失敗したら」


「……」


「どうする?」



 少しだけ考える。


 そして——


「その時考える」


「……ふふ」


 呆れたように笑う。


「適当」


「だろ?」



 でも。


 その方がいい。


 今は前だけ見てればいい。



「……ありがとう」


 リゼが小さく言う。


「何が」


「ここまで来てくれて」


「まだ終わってねぇよ」


「うん」



 騎士が一歩前に出る。


「守ります」


「頼む」


「絶対に」



 看守長が肩を回す。


「久しぶりに本気出すか」


「軽いな」


「軽い方が上手くいくのよ」


「ほんとかよ」


「ほんとよ」



 静寂。


 でも——


 もう迷いはない。



「……行くぞ」


 俺が言う。


「うん」


「はい」


「ええ」



 全員の声が重なる。



 これで準備は終わり。


 あとは——


 やるだけだ。



 次で。


 すべてが決まる。

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