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第22話 『試される覚悟』

「いい作戦だね」


 監獄長は、静かに笑っていた。


 いつの間にか——


 すぐそこに立っている。


「……聞いてたのか」


「全部ね」


「趣味悪いな」


「褒め言葉?」


「違う」



「止めに来たのか」


 俺が聞く。


「どう思う?」


「……分かんねぇ」


「正直でいいね」


 くすっと笑う。



「別に止めないよ」


「またそれか」


「ただ——」


 少しだけ目が鋭くなる。


「確認しに来た」


「何を」


「覚悟」



 空気が張り詰める。



「その作戦」


 監獄長が言う。


「成功率は低い」


「分かってる」


「誰も残らないルートは特にね」


「……」


「それでもやる?」


「やる」


 即答だった。



「即答か」


「当たり前だ」


「どうして?」


「決まってるだろ」


 リゼを見る。


 そして——


「全員で出る」


「……」


「それだけだ」



 数秒の沈黙。


 監獄長はじっと見ていた。


 俺たちを。


 順番に。



「……いいね」


 小さく呟いた。


「嫌いじゃない」


「そうかよ」



「じゃあもう一つだけ教えてあげる」


「……は?」


「ヒント」


「都合良すぎないか」


「気分よ」


 軽く言う。


 でも——


 絶対意味がある。



「結界はね」


「うん」


「“反応してる”んじゃない」


「……?」


「“判断してる”の」


「……は?」



「侵入かどうかを」


「選別してる」


「……」


 頭が一瞬止まる。



「つまり」


 騎士が言う。


「単純な物理じゃない」


「そう」


「意思がある?」


「近いね」



「……クソゲーかよ」


 思わず呟いた。


「だから面白いのよ」


「全然面白くねぇ」



「でも」


 監獄長は微笑む。


「逆に言えば——」


「……」


「“誤認させればいい”」


「……!」



 全員の視線が動く。



「侵入じゃないと判断させる」


「……」


「あるいは」


「侵入対象を別にする」



「……なるほど」


 看守長が低く言う。


「誘導だけじゃ足りない」


「そう」


「“認識”をズラす必要がある」



「……それどうやるんだよ」


「それを考えるのがあなたたち」


「丸投げかよ」


「ヒントは十分でしょ?」



 確かに。


 十分すぎる。


 むしろ——


 核心に近い。



「もう一つ」


「まだあるのか」


「最後」


 指を一本立てる。


「時間」


「……」


「長く開けようとするな」


「?」


「“一瞬”でいい」


「……」


「欲張ると失敗する」



 静かに言う。


 でも——


 重い。



「……分かった」


 俺は頷く。


「使わせてもらう」


「どうぞ」



「なんでそこまで教える」


 ふと聞いた。



 監獄長は少しだけ考えて——


「見てみたいから」


「何を」


「君たちが」


 一瞬だけ真顔になる。


「どこまで行けるか」



 そしてまた笑う。


「それだけ」


「……」


 信用していいのか分からない。


 でも——


 嘘ではない気がした。



「じゃあね」


 踵を返す。


「次は本番で会おう」


「会いたくねぇな」


「冷たいね」



 ガチャリ。


 扉が閉まる。



 静寂。



「……やばいな」


 俺が呟く。


「ええ」


 看守長も頷く。


「一気に難易度上がった」



「でも」


 リゼが言う。


「道は見えた」


「……ああ」



「結界は“判断する”」


「つまり」


「騙せる」



「やること決まったな」


「はい」


 騎士が頷く。


「最終調整です」



 もう迷いはない。


 やるしかない。



 次で——


 決まる。

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