第21話 『同時突破という解答』
薄暗い倉庫。
床に描かれた簡易の図。
「……もう一回整理するぞ」
俺は指で線をなぞる。
「結界は“固定じゃない”」
「うん」
リゼが頷く。
「侵入しようとした場所に集まる」
「つまり」
騎士が続ける。
「一点突破は不可能」
「そう」
⸻
「でも」
俺は線をもう一本引く。
「“分散”させればいい」
「分散?」
「同時に複数箇所を狙う」
「……」
看守長が口角を上げる。
「いい線いってるじゃない」
⸻
「結界は一箇所に集まる」
「うん」
「なら逆に——」
「分散させて薄くする」
「正解」
看守長が頷く。
⸻
「でも」
リゼが言う。
「それってどうやるの?」
「そこだ」
俺は装置の図を指す。
「水流制御」
「……」
「これを使って」
「結界の“反応位置”をズラす」
「……!」
騎士の目が少し見開いた。
「つまり」
「フェイント」
「先に別の場所に反応させて——」
「本命を通す」
「……なるほど」
⸻
「でもそれだけじゃ足りない」
俺は続ける。
「時間が短すぎる」
「数秒」
リゼが言う。
「四人は無理」
「だから」
指を二本立てる。
「“二段階”にする」
⸻
「二段階?」
「まず第一段階」
図に丸を描く。
「看守長が攪乱」
「任せなさい」
「その間に結界を一方向へ引き寄せる」
「うん」
⸻
「第二段階」
別の位置に印をつける。
「俺とリゼで本命ポイントを開く」
「……」
「そこに」
「私とリゼが通る?」
騎士が言う。
「いや」
俺は首を振る。
「ここで“ズレ”を使う」
⸻
「ズレ?」
「人間は完全に同時に動けない」
「……」
「だから逆に」
「微妙にタイミングをずらす」
「……!」
⸻
「先に一人」
「次に一人」
「その“連続”で全員通る」
「でも」
リゼが言う。
「結界戻るよ?」
「戻る」
「だから——」
少しだけ間を置いて言う。
「“戻る前に押し切る”」
⸻
「……無茶です」
騎士が即答。
「成功率は?」
「低い」
「どれくらい」
「体感で二割くらい」
「低すぎます」
「でもゼロじゃない」
⸻
沈黙。
そして——
「やる」
リゼが言った。
迷いなし。
⸻
「私も」
騎士が続く。
「守るために」
⸻
「当然でしょ」
看守長は笑う。
「ここまで来て引く気ないわよ」
⸻
「……全員バカだな」
俺は呟く。
「今さらね」
「だな」
⸻
「役割を再確認する」
俺は全員を見る。
「看守長」
「はいはい」
「攪乱+誘導」
「任せなさい」
⸻
「騎士」
「はい」
「見回り制御+突入サポート」
「了解」
⸻
「リゼ」
「うん」
「結界感知+タイミング指示」
「任せて」
⸻
「俺」
「はい」
「装置操作+突破」
「一番危ないやつだな」
「分かってる」
⸻
「……ねぇ」
リゼが言う。
「今回、いけると思う?」
「……」
少しだけ考える。
正直に言うなら——
厳しい。
かなり厳しい。
でも。
⸻
「いける」
俺は言った。
「やるからにはな」
⸻
リゼが笑う。
少しだけ安心したように。
「うん」
「いける」
⸻
「……ほんと変なチーム」
看守長が呟く。
「最高よ」
「自分で言うな」
⸻
その時。
騎士が小さく言った。
「……静かに」
「?」
「誰かいます」
⸻
空気が張り詰める。
外。
気配。
⸻
そして——
「ふふ」
あの声。
⸻
「いい作戦だね」
⸻
監獄長だった。




