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第17話 『脱出開始』

 夜。


 すべてが静まり返っている。


「……行くぞ」


 小さく呟く。


「うん」


 リゼが頷く。


 騎士は無言で周囲を警戒。


 看守長は——いつものように余裕の笑み。


「タイミングは?」


「もうすぐ」


 騎士が言う。


「見回りが一巡します」


「その隙だな」


「はい」



 水路へ。


 あの通路。


 何度も通った場所。


 でも——


 今日は違う。


 失敗は許されない。



「配置につけ」


 騎士の声。


 全員が動く。


 俺は装置の前へ。


 リゼは少し離れた位置で目を閉じる。


 看守長は入り口側。


「いつでもいいわよ」


「了解」



「……リゼ」


「うん」


「頼む」


「任せて」


 目を閉じる。


 集中。



「……今」


 小さく呟いた。


「まだ」


「……もう少し」



 カツン、カツン——


 遠くで足音。


 見回りが動いている。


「急げ」


 騎士が低く言う。


「分かってる」



「……今!」


 リゼが叫んだ。


「来る!」


「よし——!」


 レバーを握る。


 一気に引く。



 ゴォォォォン——!!


 装置が唸る。


 水が荒れる。


 振動。


 強い。


 前より明らかに。



「どうだ!?」


「……感じる!」


 リゼが声を上げる。


「結界が——」


 手を伸ばす。


「揺れてる!」


「どれくらいだ!?」


「……いける!」



 ピィィィィィ!!


「来たな……!」


 警報。


 だが構わない。


 ここが勝負だ。



「行くぞ!」


「はい!」


 騎士が先行。


 通路を抜ける。


 地上へ。



 夜風。


 久しぶりの外。


「こっち!」


 看守長が先導する。


「最短ルートよ!」


「頼む!」



 走る。


 全力で。


 足音が響く。


 警報が鳴り続ける。


「止まれ!!」


 遠くで叫び声。


「バレてる!」


「当たり前です!」



 壁が見えた。


 あの巨大な外壁。


「ここだ!」


 騎士が止まる。


「結界ポイント!」


「リゼ!」


「うん!」



 リゼが前に出る。


 手を伸ばす。


 空間に触れる。


「……ある」


「どうだ!?」


「薄くなってる!」


「よし——!」



「今だ!」


 俺が叫ぶ。


「一気に抜けるぞ!」



 その瞬間。


 ガンッ!!


「!?」


 空間に衝撃。


 リゼが弾かれた。


「っ……!」


「リゼ!?」



「……違う」


 リゼが呟く。


「何が!?」


「これ……」


 顔が歪む。


「“弱くなってる”んじゃない」


「……は?」



「“集まってる”」


「……何?」


「結界が——」


 震える声。


「ここに集中してる!」


「……!?」



 その瞬間。


 ズン——


 重い圧力。


 空間が歪む。


「まずい!!」


 騎士が叫ぶ。


「罠です!!」



 ピィィィィィ!!!


 警報がさらに激しくなる。


「侵入者確認!」


「包囲しろ!」


 完全に囲まれている。



「……やられた」


 看守長が呟く。


「これは——」


 苦い顔。


「“逃がさないための誘導”ね」


「……最初から!?」



「どうする!?」


 俺が叫ぶ。


 リゼは苦しそうに立っている。


 結界の圧が強すぎる。



「……まだ」


 リゼが言った。


「まだいける」


「無理だ!」


「でも——」


 顔を上げる。


 まっすぐな目。


「ここで止まったら、終わり」


「……!」



 時間がない。


 選択の時間。


 進むか。


 引くか。



「……どうする?」


 看守長が聞く。


「ここが分岐よ」



 答えは——

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