表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/39

第16話 『決戦前夜とそれぞれの想い』

 夜。


 空気が、やけに静かだった。


 明日——やる。


 そう決まってから、時間の流れが妙に遅い。


「……寝れねぇ」


 独り言が漏れる。


「そりゃそうでしょ」


 声がした。


 振り向くと——看守長。


「お前かよ」


「残念だった?」


「いや安心した」


「どういう意味?」


「一人だと変なこと考えそうだからな」


「へぇ」


 くすっと笑う。



「怖い?」


「……まぁな」


 正直に答えた。


「死ぬかもしれないしな」


「そうね」


「捕まったら終わりだし」


「そうね」


「それでもやるんだろ?」


「やる」


 即答だった。


 看守長は少しだけ目を細める。


「ほんと変な人」


「お前もな」



「後悔しない?」


「どうだろうな」


「曖昧ね」


「でも」


 少しだけ息を吐く。


「やらなかったら、もっと後悔する」


「……」


 看守長は何も言わなかった。


 ただ、少しだけ笑った。


「いい答えね」


「そうか?」


「ええ」



「……ちゃんと戻ってきなさいよ」


「どっちに」


「どっちでも」


「雑だな」


「本音よ」


 軽く言う。


 でも——


 その言葉は、軽くなかった。



「……ありがとうな」


「何が?」


「色々」


「まだ早いわよ」


「それもそうだな」



 看守長は去っていった。


 静かに。



「……寝れないんですか」


 今度は騎士。


「お前もか」


「見回りです」


「絶対違うだろ」


「……」


 否定しなかった。



「明日です」


「だな」


「確認します」


「何を」


「危険です」


「知ってる」


「戻れないかもしれません」


「知ってる」


「それでも行きますか」


「行く」


 即答だった。



 騎士は少しだけ黙った。


 そして——


「……なら」


「ん?」


「私が守ります」


「……」


「絶対に」


 まっすぐな目。


 迷いがない。


「頼りにしてる」


「当然です」


 少しだけ、誇らしそうだった。



「ねぇ」


 最後に声。


 リゼだった。


「……お前も来るよな」


「うん」


 ゆっくり近づいてくる。


「ちょっとだけいい?」


「何が」


「これ」


 手を差し出す。


 自然に。


「……ああ」


 握る。


 温かい。



「明日さ」


「うん」


「怖い?」


「……少しだけ」


「だよな」


「でも」


 リゼは小さく笑う。


「楽しみ」


「……」


「外、見れるかもしれないから」


 まっすぐな目。


 やっぱりブレない。



「ねぇ」


「ん?」


「もし失敗したら」


「……」


「その時は」


 少しだけ言葉を選んで——


「ごめんね」


「なんで謝るんだよ」


「巻き込んだから」


「最初から巻き込まれてるって言ったろ」


「……ふふ」


 少しだけ安心したように笑う。



「成功したら」


「うん」


「何したい?」


「……考えてる」


「何を」


「普通のこと」


「普通?」


「うん」


 少しだけ目を細める。


「歩いたり」


「食べたり」


「笑ったり」


「……」


「そういうの、全部やりたい」


「……全部やれ」


「うん」



 少しだけ沈黙。


 でも——


 嫌じゃない。



「……ありがと」


 リゼが言った。


「何が」


「一緒に来てくれて」


「まだ行ってねぇよ」


「それでも」


 くすっと笑う。


「嬉しい」



 手が、少しだけ強く握られる。


 そして——


 ゆっくり離れた。


「……じゃあ」


「ああ」


「また明日」


「また明日」



 その夜。


 誰も眠れなかった。


 でも——


 誰も後悔していなかった。



 そして——


 明日。


 すべてが動く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ