第13話 『脱出計画とそれぞれの役割』
警報騒ぎから一夜。
俺たちは、人気のない倉庫に集まっていた。
「……で、やるんだな」
俺が言うと——
「やる」
リゼが即答した。
「外、見たいから」
「……分かってる」
ブレないなこいつ。
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「無謀です」
騎士はいつも通り。
「成功率は極めて低い」
「でもゼロじゃない」
「……はい」
認めた。
止める気はもうないらしい。
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「で?」
看守長が腕を組む。
「どうやるの?」
「そこだよな」
俺は床に簡単な図を描いた。
「まず前提」
円を描く。
「この島は、水と結界で管理されてる」
「うん」
リゼが頷く。
「で、この前見た装置」
線を引く。
「水の流れを制御してる」
「つまり?」
「これを使えば——」
指で壁を示す。
「結界に影響出せる可能性がある」
「……なるほど」
騎士が少しだけ目を細めた。
「直接じゃなくて、間接的に揺らすってことね」
看守長が補足する。
「そう」
「賢いじゃない」
「お前に言われると腹立つな」
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「でも」
リゼが首をかしげる。
「どうやって外に出るの?」
「そこが問題」
俺はため息をついた。
「壁は高い、海は無理」
「じゃあ?」
「正面突破は論外」
「うん」
「だから——」
少しだけ間を置いて言う。
「“一瞬だけ”隙を作る」
「隙?」
「結界が弱まるタイミング」
「……」
「そこを突く」
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「……危険です」
騎士が即答。
「一歩間違えれば即終了です」
「分かってる」
「でも」
リゼが言う。
「それしかないよね」
「……はい」
渋々頷いた。
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「で、役割だ」
俺は全員を見る。
「まず俺」
「はい」
「装置を動かす」
「まぁそうなるわね」
「で、リゼ」
「うん」
「タイミングを見る」
「タイミング?」
「結界の変化」
「分かるの?」
「お前、“特別”なんだろ」
「……あ」
少し驚いた顔。
「もしかして」
「感覚で分かるかもしれない」
「……やってみる」
真剣な目。
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「次に騎士」
「はい」
「見回りのルート把握」
「任せてください」
「一番安定してるな」
「当然です」
ちょっとドヤ顔だった。
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「最後に看守長」
「私?」
「攪乱役」
「なるほど」
「さっきみたいに騒ぎ起こせるだろ」
「得意分野ね」
「だろうな」
ニヤリと笑う。
絶対楽しんでる。
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「……で」
全員が俺を見る。
「ほんとにやるの?」
看守長が聞いた。
「やる」
即答だった。
「やらない理由ないだろ」
「あるわよ山ほど」
「それでもやる」
リゼを見る。
目が合う。
まっすぐだ。
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「……分かった」
看守長が肩をすくめる。
「付き合ってあげる」
「お前ほんとノリ軽いな」
「面白そうだから」
「そればっかだな」
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「……確認します」
騎士が一歩前に出る。
「途中で危険と判断した場合」
「うん」
「私は強制的に止めます」
「止まると思うか?」
「思いません」
「だよな」
「……なので」
一瞬、視線を逸らしてから。
「全力でサポートします」
「……」
素直じゃねぇな。
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「ねぇ」
リゼが俺の袖を引く。
「ほんとにいいの?」
「何が」
「巻き込んで」
「最初から巻き込まれてる」
「それもそっか」
くすっと笑う。
「……ありがと」
「礼は成功してからな」
「うん」
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その時——
「ちょっと待って」
看守長が言った。
「何だよ」
「一つ足りない」
「何が」
「覚悟」
「……」
全員が黙る。
「失敗したら終わり」
「成功しても、元には戻れない」
「……」
「それでもやる?」
静かな声だった。
⸻
「やる」
俺は言った。
迷わず。
「外、見たいから」
リゼも言う。
「守るためです」
騎士。
「面白そうだから」
看守長。
「お前はそれでいいのかよ」
「いいのよ」
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こうして——
脱出計画は、形になった。
まだ粗い。
まだ危険。
でも確実に——
前に進んでいる。
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後戻りは、もうできない。




