第12話 『止まった水と鳴り出す警鐘』
水路の奥、制御室。
「……これ、やっぱ触れば分かるよな」
俺は装置を見つめた。
巨大な回転機構。
流れ込む水。
そして——側面のレバー。
「やめてください」
即座に騎士が止める。
「さっき言ったでしょう」
「でもさ」
「最悪、島全体に影響出ます」
「それはそれでデータ取れるわね」
「黙ってろ看守長!」
こいつほんとブレないな。
⸻
「……少しだけ」
リゼが言う。
「動かしてみるのは?」
「お前も乗るのか」
「だって」
装置を見つめる目が真剣だった。
「知らないままじゃ進めない」
「……」
正論だ。
めちゃくちゃ正論。
「……ほんの少しな」
「やめてくださいって!」
騎士の制止を無視して——
レバーに手をかける。
「いくぞ」
「ちょっと——」
カチッ。
⸻
次の瞬間。
ゴォン——!!
「!?」
低い振動。
装置全体が震える。
「おいおいおい!」
水の流れが変わる。
明らかに強くなった。
「やりすぎです!」
「いやちょっとしか動かしてないぞ!?」
その時——
ピィィィィィ!!
「……は?」
警報音。
めちゃくちゃデカい。
「ちょっと待てこれ」
「完全にアウトです」
「分かるわ!!」
⸻
「見回り来る!」
騎士が叫ぶ。
「どうする!?」
「戻せ戻せ!」
慌ててレバーを戻す。
カチッ。
振動が止まる。
水の流れも元に戻る。
でも——
警報は止まらない。
「なんで止まらねぇんだよ!!」
「安全装置が作動してます!」
「優秀すぎるだろ!!」
⸻
「隠れて!」
騎士の指示で、即座に散る。
装置の裏、影へ。
息を潜める。
足音が近づく。
複数。
さっきより多い。
「完全に包囲されてるわね」
「冷静に言うな!」
⸻
ガチャリ。
扉が開く。
「異常箇所はここか」
低い声。
見回りが入ってくる。
「水流変化確認」
「原因を特定しろ」
完全にバレた……と思った、その時。
⸻
——バシャッ!
「!?」
水音。
別の場所から。
「何だ!?」
「そっちか!」
見回りの足音が離れていく。
全員、そっちへ向かった。
⸻
静寂。
「……助かった?」
小声で呟く。
「多分な」
ゆっくり顔を出す。
誰もいない。
⸻
「ナイス判断ね」
看守長が言う。
「お前何した?」
「ちょっと別の水路いじっただけ」
「器用すぎるだろ!」
「これくらい朝飯前よ」
ドヤ顔だった。
⸻
「……でも」
リゼが呟く。
「今ので分かったね」
「何が?」
「この装置、ちゃんと反応する」
「……ああ」
つまり。
使える。
ただし——
「リスク高すぎだろ」
「それも分かった」
頷く。
「でも」
俺を見る。
「進める?」
「……」
少しだけ考える。
そして——
「進めるしかないだろ」
「ふふ」
リゼが笑う。
「やっぱり」
⸻
「無茶です」
騎士が言う。
「でも止めません」
「なんでだよ」
「止めてもやるからです」
「バレてるな」
「……だから」
一瞬、言葉を選んで——
「せめて、私も一緒に」
「……」
こいつも完全に乗ってきてる。
⸻
「いいチームになってきたじゃない」
看守長が言う。
「研究対象として最高よ」
「だからその言い方やめろ!」
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警報は、まだ遠くで鳴っている。
でも——
俺たちはもう止まらない。
無理ゲーだろうがなんだろうが。
やると決めた以上——
進むしかない。
⸻
その日。
俺たちは初めて“失敗しかけた”。
そして同時に——
“進める”ことも知った。




