救出忍者 其の七
「アラン、その術を解け。此奴にはあまり効きそうもない」
「……言われなくても」
自分一人で戦うのなら、火落影牙狼王の防御力が頼りになる。
しかし、守りたかった張本人がここまで出張っている以上、自分の身ばかりを守るわけにはいかない。
「つうか何なんだよこれ。賢者はどこ行った?」
「いやよく分かんない。賢者倒したらアレになった」
「アラン、貴方何言ってるの?」
「本当なんだってば!」
いやしかし、言ってる事がおかしいのは自分でも思う。
アレはどう見ても賢者じゃないし。
「アレは魔王の魔力に感じるの。賢者は魔王の復活を目論んでおったわけじゃし」
「……魔王ってあんななの?」
「馬鹿を言うな」
「ですよねぇ」
となれば、失敗か。
本来であれば師匠が必要な儀式を、僕が助けてしまったから不完全となったのだ。
「ともかく、魔王の力なのね。だったら都合がいいじゃない」
「……?」
「私を誰だと思っているの? 魔王を倒すのは、勇者だと相場が決まっているわ」
「あ、ちょっと……!」
自信満々に、フローレスは駆け出す。
……大丈夫かなぁ? アレって物理的な干渉はできないんだけど。
「きゃあ!?」
「言わんこっちゃない!」
「世話が焼ける娘っ子じゃの」
「思ってたけど、あの子ってちょっとせっかちだよな?」
魔法攻撃を持たないフローレスは、魔力の塊を浴びてなんらかのダメージをうけたらしい。
結局、三人がかりでフローレスを助ける事になる。
「痛いわ!? 何も攻撃されていないのに!」
「アレが無害なら倒す必要ないだろ!!」
……フローレスってこんなに短絡的だったかな?
勝てるか心配になってきた。
「貴様が勇者でなかったら微塵じゃぞ。魔王の魔力の奔流じゃ。それを受けてただで済むはずがあるまい」
「むしろ凄えと思うがな。勇者ってそんなん食らって平気なのか?」
本来であれば、師匠の言うように死んでいただろう。
勇者のスキルに助けられた。確か、魔力的な干渉から身を守る常時発動型のスキルがあったはずだ。
余談だが、闘技大会で僕がフローレスを直接魔法をぶつけなかったのは、このスキルに防がれる事を嫌った結果である。
「一応聞くが、これ逃げちゃダメなのか?」
「世界が滅ぶまで止まらなそうなモノを捨て置けるものか」
「師匠がそう言うなら僕が逃げる理由はなくなった」
「ここは私の街だもの。勇者が逃げられるわけないでしょう」
三者三様。
しかし、想いは同じだ。この魔力の塊を蹴散らして、ちょっと世界を救ってやろう。
「逃げたければ逃げてもいいよ?」
「なんで? お前らがやるならオレだってやるさ」
……訂正しよう。三者どころか、ここにいる全員が同じ事を思っている。
「作戦会議の時間はない。全員が全員に合わせて動くのじゃ!」
「…………」
返事をする時間すらもったいない。
僕らは目配せのみで合図を送り、それぞれの行動に移る。
【魔法:フラッシュファイア】
師匠の一撃目。
炸裂する無数の炎を撒き散らし、広範囲に攻撃をする。
魔法攻撃の規模が重要となる現状にあって、確かに有効的な手段。
しかし、狙いはそれだけではない。
【遁法:彼狩飛】
賢者との連戦によって疲弊した僕の補助だ。
いつもならば自分で火を撒くところだが、今は少しでも体力を温存したい。
「世話になるぜ」
「……仕方ないな」
僕の彼狩飛に、クラークが便乗する。
正直言えば不快だが、今はそんな事を言っている場合じゃあない。
なにせ、アレはこちらの状況を把握しているようなのだ。魔力の塊のクセして、こちらをジッと見ている。
なんか気持ち悪いので、さっさと終わらせてしまう事としよう。
「女性を前にしてよそ見とは失礼ね!」
僕らを見失った事に動揺したらしい反応を見せた塊に、フローレスがちょっかいをかける。
魔法的な攻撃手段を持たないアイツが何をするのか分からないが、大丈夫なのかアイツ。
【魔法:マジックコート】
「助かるわ!」
師匠の魔法。
これにより、フローレスの攻撃は魔法に干渉力を持つ。
撃ち込まれた拳は、先程のように突き抜ける事なく塊を削る。
それに伴い、塊は怯んだように後ずさった。
【魔法:ボルトロール】
地面を転がるように広がる雷。
広範囲の攻撃は、塊に対してこれ以上にない有効打となる。
「直々に教育してやったわ! 女子の扱いを学ぶ事じゃな!」
「…………」
「なんじゃ勇者貴様! その目はなんじゃ!」
いや、これはフローレス責めらんないな。
エスコートされるべき淑女気取りの幼女は結構滑稽だ。
「……次は、オレ達の番だな」
「喋んな。聞かれるかもしれない」
塊が音を聴くとは限らないが、備えるに越した事はない。
さて、クラークの言う通り、ここからは僕たちの番だ。




