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迷子忍者

「やっべ、見つかるところだった」


「じゃから近づきすぎるなと言ったろう」


「「どれ、当代の勇者とやらを見てみるかの」って言ったの師匠でしょう」


「お前ら勇者と知り合いなのか?」



 教会へと受付を済ませようとする道中、僕達は随分豪華な行列につかまってしまった。闘技大会に参加する貴族の列だ。これほど大規模となるとちょっとしたパレードのようで、毎年非常に盛り上がる。



「知ってはいるけど、知り合いって感じじゃないな」


「なんだそれ」



 顔がバレないようにフードで顔を隠す。

 僕だけ隠しているのも変なので、師匠とクラークも同じようにしている。



「何にしても、これじゃあ教会には行けないね。先に宿を取ろうか」


「任せた」


「ぬしの好きにするが良い。私達は道が分からんし」


「僕だって下街を歩くのは初めてだけどね。馬車では通った事があるくらいで」



 ただ、迷う事はないだろうと思う。

 この時期に街の外から来る人間が多いのは毎年なので、そもそも不慣れな人間でも散策ができるように案内板などが多く設置されているのだ。

 多少旅慣れた人間ならば、人に聞かずとも好きな場所に行ける。

 そして、僕と師匠は既に二つの街を経由してここにいるのだ。迷う理由などない。



 ◆



「……おい」


「おかしい……どうなってるんだ?」


「お前がどうなってんだ」



 周りは、全く見覚えのない景色。つまり、僕が馬車で通った事がない場所という事だ。

 見たところ人通りも少なく、薄汚れていて観光向きの場所とは思えない。

 僕でなくとも、貴族ならまず入らないような場所なのだろう。



「自信満々だったからついて来たってのによ。なんなんだお前は」


「そんな! 僕は案内板に従って……!」


「こんなスラム一歩前みたいなとこに案内する表示がどこにあったんだよ!!」



 いや、正直盲点だったのだ。

 こればかりは仕方のない事で、僕では回避できなかった。


 まさか、まさか……


「……()()()()()()()()()()()()なんて知らなかったんだよ!」


「書いてあるわけねえだろ!!」



 この国の識字率は、貴族を除けば20%にも満たない。

 まさかそんな社会で、文字など書き記すはずがないのだ。そんな事をしても意味がない。

 なので、看板や案内板には、基本的に絵や記号が用いられる。一般市民は、日々の生活の中でどの記号が何を表すのかを少しずつ把握していくのだ。


 つまりは慣れ。

 普段から見慣れている人間には、確かに見やすい案内板なのだった。


 もちろん、僕はそんな事を知らない。

 見た事すらないので、どの記号が何を表すのかさっぱりだ。

 仕方なしに予想で動いた結果、勘違いをしたまま街の外れまで来てしまった。



「初めからオレに任せりゃ良かったんだ! 読めたのによ!」


「読めるなら先に言ってよ!」


「読めねえなら先に言えよ!」


「ぬしら落ち着け。騒いでおっても解決はせんぞ」



 師匠流石に落ち着いてんな!?



「王都は外壁で囲まれておる。取り敢えず壁の反対側が街の中心じゃろう」


「流石師匠! いやぁ、助かるなあ」


「下手なおべんちゃらはやめい」



 ともかく、随分と遠回りになったが、完全に迷ってしまう事はなさそうだ。

 どうやらクラークが案内板が読めるらしいし、今度は任せてしまおう。


 ……自分が暮らした街を案内してもらうというのもおかしな話だ。



「……気付いておるか?」


「え? まあ、はい」


「おいおい、マジでやんのか?」



 師匠の言葉に、クラークが眉間にシワを寄せる。

 面倒だと、その表情が語っていた。



「なんだよ、バレてたのか」


「つうか隠れる必要ねえって言ったろ。さっさとやっちまおうぜ」



 僕らの会話を聞いて現れたのは……なんというか、すごく悪そうな男達だった。

 雑な説明だが、本当にそんな感じだ。顔に傷があったり、ボロ服を着ていたり、刃物を持っていたり、スキンヘッドだったりしている。

 そんな男が、パッと見て4、5人。前に賊に襲われた事があるが、まるっきりこんな連中だった。



「……なんというか、こういう輩は代わり映えせんの」


「バラエティに富んでても困りますけどね。めんどくさいし」


「今もってめんどくせえよ。無視しちゃいけねえのか?」


「……テメェら舐めてんなぁ?」



 僕らは普通に会話をしたわけだが、どうやら彼らにとっては腹立たしいものだったらしい。



「無視したくても、相手から襲ってくるわけだし」


「お前ぇのせいだぞ、こんなとこに来たのは。責任とってちゃんと相手しろ」


「えぇー、もう仕方ないなぁ」



 正直言って、こんな有象無象は相手にならない。ただ、弱いからといって面倒じゃあないという意味ではない。

 特にここは彼らの住処のど真ん中であり、仲間は見えているだけではなかった。


 倒せば後から後から新手が湧いて出て、片付くには思ったよりも随分と時間がかかってしまう。

 終わる頃には、日はすっかり暮れてしまっていた。

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