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応戦忍者 其の一

「師匠、これは……!?」



 揺れる大地。鳴く大地。

 尋常ならざる事態を予感し、思わず師匠の方を向いた。



「……考えたくもないが、失敗したやもしれんの」


「ああ……確かに考えたくもない……」



 正直、僕も同意見だった。

 地震や地鳴り程度であれば、珍しいが一応ないという程でもない。ここ何十年も観測されていない希少災害が、このタイミングで発生した可能性は否定できないだろう。


 だが、これは確実に違うと断言できる。


 未熟さ故に師匠の接近を感知できなかった今さっきとは違う。あるものをないと誤認する事はあっても、その逆はないのだ。それは幻覚であり。そうなれば全く別の大問題となる。

 という事は、大問題である事に変わりはない。


 端的に言えば、巨大な魔力を感じる。



「念のため聞くんですけど、勘違いではないですよね? 地震と魔力には何の関係もなくて、偶然凄い魔力の人が近くにいるってだけとか」


「どうじゃろうか。接近ではなく出現じゃからのう。もしも空間転移をするくらいの魔術師というのなら、なるほどこの魔力もうなづけるが……」


「……そんな人間がいた方が竜よりもおっかなそうだ」


「分かっておるの。竜の方が遥かにマシじゃ」


「じゃあ、魔力が起こる自然災害とかはないんですか? なくはないんでしょう?」


「あるのう、ある。魔力は全ての生命が持っておるからのう。多くの人間が同じ場所で一度に死ねば、霧散するはずじゃった魔力が超常現象を起こす事がある。最近この辺りで戦争はあったかのう?」


「……なかったなぁ」



 結論すれば、やはり作戦は失敗らしい。

 何が起こったのか知るべくもないが、ともかくとしてそれは間違いがない。


 いや、僕はまだ諦めないぞ。

 凄い魔力の人が偶然比較にある説は、まだ完全に否定されたわけじゃあない。

 空間転移の魔術師がいるかもしれないし、僕と師匠が接近に気が付かなかったから突如出現したように感じているだけかもしれない。


 師匠はそうそうそんなミスはしないと思うが、絶対に仕損じない者など存在しない。

 可能性は充分に……



「おぉい! 作戦は失敗っすぅ!!」



 あ、はい。


 倒竜堂を見張らせていた山賊が全速力で走ってきた。

 何もさせる事がないから適当に振り分けた仕事だったが、意外に役に立ったな。



「山賊、何があったのじゃ」


「僕らのミスか?」


「いや、兄さんたちのせいじゃないっす。冒険者の中に裏切り者がいたんす。何が目的かは分かんないんすけど、急に仲間を殺して宝具を壊したんすよ!」



 はぁ? 何だそれ意味がわかんないぞ。



「何で冒険者がそんな事をする必要がある? 他に何か言っていたか?」


「あ、いや、俺は兄さんと姉さんに早く報告しようと思ってたから……」


「役立たずが、殺されたいか」


「いや言い過ぎだろ更年期障害か? でも役立たずだ、ふざけやがって」


「なんで一回庇うフリするんすかね!?」



 失敗したとなれば、つまり竜が復活するという事だ。

 ゆっくりしている時間なんてない以上、この後の対応はもう一通りしかない。



「走れアラン」


「言われるまでもない!」


「あ、俺の事は無視なんすね……」



 倒竜堂までは大した距離じゃあない。

 僕と師匠が魔法によって身体能力を補助すれば、一分もかからずに到着できるはずだ。



「師匠、竜が復活するまであとどれくらい……」


『グォオオオォォォオオ!!!!』



 突如として轟く叫び声。耳のみではなく体全体で感じるその音を境に、地震は治ったようだった。



「……なるほど」


「千年ぶりの外じゃというのに、随分と退屈せんの」


「ちなみにだけど、この状況、解決法あります?」


「一応じゃけど、あるにはあるのう」


「その方法、危ないですか?」


「危なくないと思うとるんなら、私はぬしを鍛え直さねばならんの」


「ああ、すみません、訂正します。どれくらい危ないですか?」



 師匠は腕を組み、首を捻り、ほんの数秒間だけ考えてこう言った。



「命が懸かるの」

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