驚愕山賊
山賊ってなんなんすかね?
俺もう山賊じゃないって言ってんのに。
まあ、聞いてはくれねえみたいっすから別にいいんすけどね。
俺の役割は、倒竜堂の監視。アラン兄さんが冒険者を引き連れた後、そしてその冒険者が戻ってきた時、問題が起きていないか見ておけと言われたっす。
ぶっちゃけなくても良いような仕事っすね。
正直、俺の仕事は子供に葉っぱを集めるように指示を出したところで終わったも同然っした。何のために起こされたんだろ?
兄さんと姉さんは「子供たちに働かせるのにお前だけ寝かせてるわけないだろ」と言ってたっす。まあ言いたい事は分からんすけど、そこまであけすけにする必要あるんすかね? もうちょっと取り繕っても良いじゃないっすか。
まあそんな感じなんすけど、とりあえず適当な仕事を割り振られたっぽいっす。子供が働いてる手前、俺が暇してるわけにもいかないっすから。
とはいえ暇なんすけどね、これ。
兄さんが飛び出してきてから、特には何もないんすもん。
堂内には冒険者が二人だけ残ってるんすが、あいつらマジで何もしないんす。
別になんかしろとはいわないっすけど、壊れた木像の片付けとかもしないで座り込んでるんす。
何なんすかね?
おっと、そうこうしているうちに(いや、むしろ何もしてないんすけど)冒険者たちが帰ってきたみたいっす。
アラン兄さんが捕まっていないところを見るに、どうやら作戦は成功みたいっすね。
ああ、いやいや、もしかしたら逃げ出しただけかもしれない。まだ安心はできねっすね。
いや? 別に兄さんを信用してないわけじゃないっすよ? ただ、やっぱり相手も素人じゃないっすから。上手く宝具を渡せなかったかもしれないって……
「見ろ、アイツ宝具を持ってやがった」
すまねっす兄さん。
俺は信用してたっすよ。兄さんなら必ずやってくれるってね!
「どういう事だ? 宝具ならそこで砕けているだろう」
「いやあ、俺にはわかんねえよ。でも、アイツがこの宝具を取り落としたんだ」
盗み聞きって気分が悪いっすねえ。友達のおやつを黙って食べちゃったくらい罪悪感あるっす。
とりあえず、作戦は成功っぽいから俺の役目は終わりっすね。
もうちょっとだけ話を聞いたら報告に戻るっすかねえ。
「……つまり、いつの時点からかこの宝具が偽物だったと?」
「それしか考えられねえ。それなら、宝具を壊した事も理由が分かるだろう。アイツが宝具を持っているなんて夢にも思わなかったのは、間違いなくあれが原因なんだからよ」
「いやしかし、そもそもこれが本物なのか判断ができない。やっぱり壊れた方が本物なのかも」
「で、盗っ人が偶然偽物を持ってたってか?」
「この街にはレプリカを売っている土産物屋がある。ありえない話じゃあないだろう」
「あ、俺それ持ってるわ」
マジか、毎度ありっす。
いやしかし、ちょっと雲行きが怪しっすかね。
残ってる方は本当に本物なのに、何か疑い始めてるっす。
信じてもらえないのは辛いっすねえ。俺みたいに誠実な男には堪えるっす。
「おい、それが本物なのかどうか、すぐに分かる方法があるぞ」
お、マジっすか。
倒竜堂に残ってた男がようやく話したっす。いやいや、何で今まで話してなかったんすか。存在を忘れるところっすよ。
いやしかし、正直安心っす。
このままあれが偽物だって言われたらどうしようかと思ってたっすよ。
俺は単なる監視だから、あの状況になにかするなんてできないんすもん。
でもどうするんすかね?
たしか、姉さんくらい凄い魔術師じゃないと分かんないって聞いてたんすけど。
てか、そうじゃないと賢者様がわざわざ来るわけないっすよね。
「本当か? だったら早く言えよ」
そうっすよ、もったいつけずに言えよ。
「——それを壊せばいいんだよ」
んんんん????????
俺が混乱してる間に、ほんの数瞬の間に、事態は最悪になったっす。
姉さんが言ってた、想定する中で最悪ってやつっす。
宝具を持っている冒険者の頭が、ゴロンと床に転がったんすよ。
「……は?」
「一応言っておくが、逃げた方がいいぜ」
周りの冒険者がキョトンとする中、唯一その男だけが平然としていたっす。
そして平然と、宝具を床に叩きつけて砕いてしまったっす。
地震。
大地がワナワナと鳴く。
や、ヤバい!
何だからからないっすけど、やたらとヤバい事だけは俺にもわかるっす!
早く兄さんと姉さんに伝えないと!
地面揺れててめっちゃ走り辛いな!?




