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本領忍者 其の四

 あの時——レオブラッドに襲われたあの時、結局助かったのは師匠のお陰だった。

 上手くいくかもわからないスキルに賭け、そして命の危機にさらされた時、生き残れたのは師匠がいてくれたからだ。

 もしも師匠がいなかったのなら、僕は間違いなく死んでいた。


 そして、今も師匠がそこにいる。


 ともすれば負けてしまう賭けを目前として、そこに師匠がいるのだ。

 助かったと、確実だと、僕はこれ以上にない安堵を感じる。


 ……いや。


 何かがおかしい。

 もしも手助けしてくれるつもりなら、姿を現す必要はないはずだ。

 身を隠し、必要に応じて不意を打つ方が遥かに効果的なはずなのだ。


 それなのに、師匠は姿を現した。


 その上、僕の前にいるというのもどういうわけだろうか。

 僕は走っていたのだから、前へ回ろうと思ったら僕を追い越す必要がある。待ち伏せていたわけではない。なにせ、師匠は倒竜堂の外から魔法を使っているのだから。



「嬢ちゃん! そいつは悪いやつだ、逃げろ!」


「……!」



 ……そうか、そういう事か。

 それならば理解できる。今の冒険者たちの反応を見て、ようやく理解できた。


 なるほど、わざわざ僕の前に姿を現すはずだ。

 後ろに意識を向けている僕よりも、前の僕を追っている冒険者に見つかりやすい場所である。事実、僕は冒険者よりも遅れて師匠の存在に気が付いた。万一にも、冒険者に気が付かれないわけにはいかなかったのだ。


 にしても、僕もまだまだ未熟といえる。

 考え事の途中とはいえ、追われる立場とはいえ、プレッシャーを感じていたとはいえ、まさか師匠が前に移動している事に気が付かないなんて。

 本来ならば、魔力を察知する事で気が付いたはずだ。

 そうすれば、こんな不意の助力になどならなかったはずだ。


 ともあれ、僕の行うべき最善は決した。


 つまり……



「お前ら! このガキがどうなっても良いのか!!」



 師匠を人質に取る事である。



「クソ! やっぱりやられた!」



 おい、やっぱりってなんだよ。僕が見るからに人質取りそうって事がこの野郎。



「貴様! 子供を盾にするなんて恥ずかしくないのか!」



 返す言葉もねぇ……



「恥を知れ外道!! 悪魔!」


「言い過ぎだろ!! なにもそこまで……!」


「いたいけな少女を盾にしておいて勝手な事を!!」



 どこだよ、いたいけな少女。



「きゃー助けて〜!」



 ノリノリか師匠!


 違うのに……僕は子供を人質に取るような下郎じゃないのに……



「僕だってやりたくてやってるわけじゃあない。君たちが僕の事を殺そうとしなければこんな事には……」


「言うに事欠いて責任転嫁か!」


「やはり生かしてはおけんな!!」


「チクショウ!!」


「……何をやっておるアラン。ちゃんと悪役を演じんか」



 師匠がどさくさに紛れて呟く。

 冒険者たちに聞こえないような小声なのは結構だが、むしろ聞かせてやりたいと思ってしまった。


 結構、思ったよりも、誰かに批判されるのは辛いのだ。

 しかも、弁明もできない状況だとなおさら。



「……わかったよ、やれば良いんでしょ」


「……そうじゃ、分かれば良い」



 師匠の態度めっちゃむかつくな。

 自分はいたいけな少女とか言われて気分がいいのだろう。


 何が「いたいけな少女」だよ。「遺体を量産する少女」の間違いだろ。



「テメエら一歩も近付くんじゃねえぞ! 近付いたらこのガキの首が胴体とお別れになっちまうぜ!!」


「それが本性か! 許すまじ!!」



 いや全然ちげえよ。

 本性じゃねえよ。


 てかコイツらキャラ変わりすぎじゃね?

 子供の前だからってカッコつけんなよムカつくな。



「おい、このままじゃ埒があかねぇぜ」


「んな事ぁ、わかってんだよ。なんならテメエがいい策出しゃいいだろうが」



 いい傾向だ。

 相手が焦れている。


 ここで僕が隙を見せれば、彼らはすぐにでも飛びかかってくる。

 その際に宝具を取り落とせば作戦通りだ。

 問題は、どのようにすればその『隙』が自然に見えるかだが……



「てい」


「いってぇ!?」


「今だ!」



 なんと前触れも合図もなく、師匠が僕の足を踏み抜いた。


 いってぇ、クソ痛え。

 僕の指取れてないかなこれ。いや痛え、超痛え。

 きっとバターみたいに潰れてしまっているに違いない。骨と砂粒の区別がつかないくらい粉々に違いない。

 何すんだ師匠、痛え。



「このクソガキ!」


「きゃあ、お助けぇ」



 ふざけやがってババア!


 しかし、とりあえずは冒険者が僕に飛びかかってきた。

 痛すぎて痛み以外の感覚がほとんどない足の指先にどうにか力を込めて、僕は応戦のために一歩踏み出した。


 いや痛えってこれ!

 師匠演技ヘタクソかよ!

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