立案忍者
そもそも、子供でも侵入できた場所なのだ。
ならば、同じように済ませてしまうしかない。検査よりも前に済ませてしまえば、それは初めから何もなかった事と何も変わらないのだから。
「あの、言いにくいんすけど……」
「却下」
「あれぇえええ??? 俺真面目な事話そうとしたのに???」
うっぜ。
「……一応聞こうか」
「その面倒臭いって目は結構傷つくんすけど……まあいいや」
うっぜ。
「あのっすね? 先月から夜の警備が厳重になってるっす」
「はぁ!? ふざけんな、なんでそれを先に言わない!!」
「あれぇえええ??? 俺ちゃんと話そうとしたのにぃ???」
いや、いや、別にだからと言って無理と決まったわけじゃあない。
僕は忍者だ。潜む事は得意だろう、多分。
「具体的にどうなったんじゃ? 最悪、実力行使する」
「前半賛成、後半黙って」
「いや、俺も詳しくないんすけど、冒険者っぽい人達が7人くらい内と外を見張ってるんすよ」
「役立たずが」
「酷え言われようっす……」
師匠はそう言うが、実のところ悪くない情報だ。何も知らないままに同じ事をやっていたら、たちまち見つかってしまっていただろう。
盗人と思われるのはごめんだ。
いや、似たような事をしているのだが。
「仕方ない。ならば今晩、その様子を調べるとしよう。そうでなくては始まらんわ」
「つまりは見張りの見張り、という事ですね」
「もしも検査が明日じゃったら諦めい。この街を捨てて逃げ出すしかあるまい」
「人生賭けた一世一代のお祈りじゃないっすか……」
僕が日付まで覚えていれば解決なのだが、流石にそこまでは保証できない。
ハッキリとは覚えていない山賊はボロクソに言われているのに、我ながら贔屓がひどい。
「祈りでもなんでもせい。命が関わっておるようなもんじゃ」
「まあそうっすね……」
なんか納得がいかないと、山賊の目が語っている。
ただ、そんな事をいちいち気にする師匠ではないため、それが意味を持つ事はなかった。
◆
夜。
夜まで待って監視につこうと思っていたが、待つまでもなく話しているうちに夜になっていた。
山賊が何かを言うたびに師匠が辛辣な事を言って、何かと話がスムーズに進まなかったのだ。
「倒竜堂、見物客を締め切ったっす」
「ご苦労、引っ込んどれ」
「流石に酷すぎない?」
山賊を使いっ走りにして、倒竜堂の様子を報告させる。
僕たちは何も悪くないのに巻き込まれたという関係上、このくらい横柄な態度は許されるだろう。
一応フォローはするけどね。
ずっと見張っていると集中力を欠くので、3人で交代とする。
ただし、一番長い時間見張るのは山賊だ。
「扉を閉めんのう」
「閉めたら中が見えなくなるからね。中と外を巡回してるんだよ」
僕は諜報の経験などないが、ニンジャとしての能力が見張りの実力の高さを告げる。
冒険者という雑多な傭兵というイメージからは程遠い実力だ。
やや粗暴な見た目とは似合わず、誰の視界にも入らない場所がほとんどない。
中と外を定期的に入れ替わるのは、おそらく癖などによる見張りの穴をなくすため。それと、同じ場所を長く見続ける事の精神的な疲労を軽減するためだろう。
「中が見たいのう」
「いや、流石にそれは……」
師匠の意見には同意だが、そのための方法はちょっと思い浮かばない。
今は外から見える情報だけで作戦を立てるしかないだろう。
「はぁあ、流石に夜中の仕事は堪えるな」
見張りの冒険者の声が聞こえてきた。
夜中なのに声デカいな。
「こんなんするくらいなら、魔物と戦ってた方がずっとマシだぜ」
「そう言うな。この報酬はかえられんだろう」
「うっせえぞ、宵明ぇ! 黙って仕事もできねぇか?」
「なんだと、紅空! 弱小チームがいきがるじゃねぇか!」
「誰が弱小だよ、雑魚集団がよ!」
聞く限り、どうやら複数チームがこの仕事に当たっているらしい。
大所帯だと思ったらそういう事か。
「チッ! 何が悲しくてよく知りもしない奴らと依頼なんてしなきゃならなねぇんだよ。報酬も山分けだぜ」
「そう言うな、それも明日で終わりだ。賢者さまがもう来るって坊さん連中が言ってたぜ」
……は?
「戻るぞ、アラン」
師匠の即決。
こういった時、とても頼りになる。
「作戦の決行は今日じゃ。山賊を叩き起こせ」
「はい」




