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激怒忍者

「なんで本物がここにあるんだよ!?」


「知らねっすよ!? なんでこんな物がウチにぃ!??」


「やはり山賊、死ななければ治らんか……」


「師匠やめて、杖構えるのやめて」



 混乱をさらに大きくしようとする師匠をなだめて、差し当たり事態の究明に動く。

 なにせ、憲兵に僕たちは仲間だと思われているのだ。山賊が宝具を窃盗したとなれば、きっと僕たちも共犯だろうと思われるに違いない。



「まず拾ってきたっていうチビをここに連れてこい!」


「はいぃ!!」



 それから始めなければ、埒が明かない。

 ここには僕の今後がかかっている。既に追放されているのに犯罪者にまでなってたまるか。



「連れてきたっす! リリ、お話しして!」


「え、うん……」



 リリと呼ばれた少女は、戸惑いながらも話してくれた。

 ただ、一つだけ初めに注意したいのは、彼女は一切悪気がなかったって事だ。

 ただ少しだけおてんばで、ただ少しだけ自信家だった。

 そして、ほんの少しだけ臆病だっただけだ。



 ◆



 お兄ちゃんが、盗みをしてた時あったでしょう? 山賊やる前、ちょっとだけ。その時、すごいなって思ってたの。


 それで、私も真似したいって思ってね。みんなに相談したの。

 そしたら、みんなもやりたいって。

 どうせならお兄ちゃんをびっくりさせるような物にしようってなって。


 それで、街のお宝を盗む事にしたの。


 無理だろうって?

 ううん、でもできたよ。


 あのお堂ね、いつもたくさんの人がいるけど、夕方くらいになると人が少なくなるの。

 見張りをしてる人が、そろそろ閉める時間ですって言うんだ。

 そうなった時に、外で何人かが騒ぐの。

 例えば、勇者なんかいるわけないって感じで。

 お堂の人はカンカンで外に出てくるし、出てこない人もそっちを気にするでしょ? で、その時に勇者と竜の像の間に隠れちゃうんだ。


 意外に見つからないの。

 出てく時は簡単だよ。

 朝は門を開けたらまたいっぱいの人が入って来るから、開けられる門の後ろに隠れて入ってきた人の中に混ざるの。誰にもバレない。



 ◆



「それで、取ってきたって?」


「うん……でも、お兄ちゃんすぐに盗むのやめちゃったから言い出せなくて……」


「いや、待てよ。まだだろう」



 まだ、重要な事がわかっていない。



「偽物はどうやって用意したんだ。初めから偽物があったわけじゃあないんだろ?」



 これは、確実に知らねばならない。今の話の中に、偽物は出てこないからだ。

 それでは、何もできない。

 何も解決しやしない。



「どうしたんだ、いったい?」


「別に隠れたのが一回なんて言ってないけど」



 なんか僕に対してはトゲがあるな……



「何回も隠れて、近くでジッとアレをみてたの。ちょっとずつちょっとずつ何日も掛けて。それで完成したから、すり替えて帰って来た。別におかしな事じゃないよ」



 なるほど、確かに無理ではない。

 あんな物を手本にすれば、僕にだって素人にも充分作れるだろう。時間がかかりはするものの、一晩中を何日もかければ不可能ではない。



「今でも、この子には偽物を作る仕事をしてもらってるっす。凄く手先が器用で、誰よりも綺麗な偽物が作れるんすよ」


「つまり、この子の言ってる事は無理じゃあないと?」


「少なくとも俺はそう思うっす」


「いや、いや、そんな事はどうでもいいんじゃが」



 今まで黙っていた師匠が、ようやく口を挟む。



「そんな物がここにあるのは、あらゆる面で不味かろう」



 師匠の言葉はもっともだ。

 どう盗んだのかも、どう作ったのかも重要だが、究極的にはそんなもの分からなくたってよかった。

 分かる程度で解決できる問題など、現状ほとんどないのだから。



「見つかれば、私たちは処罰される事となる」



 あるいは命に関わるような、そんな罰を受ける。

 ここにいる山賊や子供たちはもちろん、共犯だと思われている僕たちまでだ。



「余計な事をしてくれたの」



 師匠が山賊を睨む。

 僕も一緒に睨んでおいた。

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