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驚愕忍者

 ぶっちゃけ何の興味もなかったが、山賊はこの街のスラム出身なのだそうだ。

 賊なんてものをやっていたのも、この子供達を養うためだと。



「自らを満たす為に他者を食い物にする下郎、悪行を正当化するおよそ看過し難い邪悪、自分の境遇であれば許されると信じて疑わない悪辣……」


「師匠待って、待って待って、言い過ぎ」


「すんません……もう絶対しないっす……」



 うな垂れる山賊は、流石の僕もちょっと可哀想かもと思ってしまった。自分を慕う子供達の目の前で罵倒されるのはどんな気分だろうか。

 別にフォロー入れたりしないけど。



「お兄ちゃん、この人たち新入り?」


「あ、いやこのお人は……」


「私を小汚い浮浪児呼ばわりとは、良い度胸じゃな(わっぱ)……」


「お姉ちゃんとっても綺麗! どこから来たの?」


「なかなか見どころのある子供じゃな。どれ、お姉ちゃんが遊んでやろう」



 年甲斐もなく、子供に混じって師匠がはしゃぐ。

 千年のジェネレーションギャップは大丈夫だろうか?



「お、お前たち、あまり失礼がないようにな……!」


「この子達は私と遊ぶのじゃ。貴様は黙っとれ」


「あ、はい、すいません」


「お兄ちゃんをいじめないで!」


「いじめてなどおらんよ! 一緒に遊ぶかお兄ちゃん!」


「あ、俺は……いいかなぁ……」


「慕われてるなお兄ちゃん」


「兄さんまで……よしてください……」



 そもそもその兄さんってなんだよ。僕の方がはるかに年下だぞ。

 いや、山賊の実年齢知らないけど。


 師匠が子供の相手をしている間、僕はその辺で暇している事にする。

 子供の相手は苦手だし、憲兵が探し回っている間はこの場所を動く事ができないのだ。嫌いな相手とはいえ、仕方なしといったところだろう。


「おい、お兄ちゃん」


「その呼び方やめてもらっていいっすか……?」


「じゃあ山賊」


「俺、もう山賊じゃねえっすよ。名前は……」


「興味ないからいいよ。それより、お前が売ってた宝具の偽物なんだけどさ」


「ひでぇ……」



 どう考えても憲兵に共犯だと思わせるほうがひでぇよ。

 そんな事よりも、僕は宝具の方が気になるんだ。



「……ウチの商品がどうかしたんすか?」


「ああ、随分と出来がいいなと思ってさ。本物と瓜二つだ」


「本物見たんすね。随分混んでたでしょう」


「そうだね。だから、不思議に思ったんだ。君は、あんなに精巧な偽物を作れるほど倒竜堂に足繁く通っていたのかな?」



 別にどうしても知りたいってわけではないけれど、何となく気になった。



「そっすね。言う通り、俺はあそこ苦手っす。でもね、あんなとこいかなくても作れるんすよ」


「……どういう事?」


「内緒にしといてくださいね?」



 山賊は、苦笑い気味にそう言う。

 何だと言うのか。

 秘密にしなくてはならないような事なのか。


 山賊は立ち上がると、小汚い箱を小脇に抱えて戻ってきた。

 中からはガラガラと音が鳴り、何かが入っているのだと思われる。



「これなんですがね……」


「お前これは……」



 箱の中に入っていたのは、ほとんどがガラクタの類だ。

 おそらくは子供のおもちゃ。手ごろな大きさの鉄棒や、おそらく森で取ったのだろうと思われるドングリなどが入っていた。

 しかし、僕の目に止まったのはそんな物ではない。

 見るからに異質。明らかに異物。


 そんな不自然さを放つ物が、たった一つだけそこに入っていたのだ。



「これ、よくできてるでしょう? これを見ながら作ったんす」



 あったのは、一見して勇者の宝具だった。

 鏡の中から取り出したかのように瓜二つだが、山賊が言うにはこれも偽物らしい。

 だが、この偽物が一番良くできていると言わざるを得ない。輝きというか、雰囲気が桁違いなのだ。

 ともすれば、倒竜堂で見たあれよりも遥かに。



「何ヶ月か前に、ウチのチビどもが拾ってきましてね。これも見ながらみんなで作ったんす」


「なるほど良くできているわけだ。こんなに間近で見られるなら、あの完成度もうなづける」



 時間をかけていいなら、僕にだってできるかもしれない。

 ここには人数がいるわけだし、多少手先が器用な子を集めて作らせているのだろう。



「おうおう、なんじゃ。男同士で内緒話とはツレんではないか」



 どうやら子供の相手に飽きたらしい師匠が(早すぎでは?)、僕たちに話しかけてきた。

 背中に子供を乗せているが、師匠も見た目は子供なのでおままごとをしているみたいだ。ちょっと微笑ましい。



「別に内緒ってわけではないですよ、宝具を見せてもらってたんです。店の偽物は、全部これを見て作ったそうですよ」


「ほほう、なるほ……」



 師匠が固まる。

 その視線は、僕が手にした宝具に向いているらしい。


 なんだろうか? この宝具に、何かおかしな事でもあるのだろうか?



「どうしました?」


「これ……」



 目を丸くして、言葉に詰まっている。


 ……いや、まさかな。

 まさか、そんな事、あるはずないよな……


 一つ思い浮かべた事があるも、僕はすぐさま否定する。

 そんな事、あるはずもないのだ。



「……これ、本物じゃぞ」



 僕の否定は、容易くもう一度否定されてしまった。


 え? マジで言ってんの?

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