ユカ 旅立ちの時
「原因となっていたファーストストレンジャーがいなくなったおかげで、過去の国々は戦争を止め、滅ばずに済んだ。魔王軍も同時期に撃退された。そして、今に至るわけだね」
すべてを聞き終えて、ユメタロウとユカは絶句していた。
二人の知らない凄絶な過去。この世界に秘められた滅亡の歴史。
同時に、ユカは、なぜジュリーがそんな話を自分達にしたのか、察しがついた。
「…ありがとうございます、お婆さん」
「なにがだい」
「力の使い方、間違えないようにします」
その一言で、ジュリーは肩をすくめて笑った。
夜の草原にら老婆のしゃがれ声が染み渡る。
「満点の答えだ」
ユメタロウがユカを見る。ユメタロウも、ジュリーがこの話をした意味を察したのだ。
ファーストストレンジャーのように、無闇にストレンジャーとしての力を振るってはならない。
ファーストストレンジャーは、力の危険性を理解せず、やたらに振るって、この世界を混乱に陥れた。その二の舞になってはいけないのだ、と。
「僕達は、この力を私利私欲のために使ったりしません。そして、その危険性を意識して使います」
「それだけ聞けりゃ安心だ」
ジュリーは腕組みをして頷く。完全に納得したようだ。
二人を交互に見て、安心した表情をする。
もう、ファーストストレンジャーのことを話し始めたときの神妙な面持ちは消えていた。
「行きな。村の連中には私から言っといてやるよ」
「ジュリーさん、すいません」
「今までお世話になりました」
「あぁそれから。ホラ、これ」
「これって…」
ジュリーがユカに、一枚の紙を渡す。
それは、拙いながらも、被写体の特徴をよく表した絵だった。
ユカと、ユメタロウと、ユリー。手を繋いだ三人の絵だった。
「ユリーちゃんの…」
「オークにさらわれる前に描いてた絵だよ。あんたらに渡そうと思って、ダメだったらしい。あの子、恥ずかしがり屋だからね」
「大事にします」
「そうしとくれ。あの子も喜ぶ」
三人は、草原に敷いたカーペットから立ち上がり、ジュリーは村の方へ、ユメタロウとユカはジュリーとは反対の方へ、一歩後ずさりした。
ユメタロウとユカはお辞儀をして、それから、村とジュリーに背を向けて、歩き去った。
「気を付けるんだよ、ストレンジャーたち」
月夜に照らされ、ジュリーは黄昏ていた。
ファーストストレンジャーに洗脳され、ハーレムの一員として働き、ハーレム要員のゴタゴタで逃げ出した貧しい村娘。
それが、ジュリーの正体だった。




