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手紙

 「あははははははは…くっくっ…あはは、ダメ止まんない…。貴方、私を笑い殺すつもりなの?」


 「……そんなつもり無いです」


 生徒がまばらな朝、似合わない音量の笑い声がまだ静かな校舎にけたたましく響く。

 彼女は屈辱とばかりに、耳まで真っ赤になった伏せた顔を草薙みのるに向け、キッと睨んだ後バツが悪そうに直ぐにまた俯いた。






 事の始まりは、今日の登校時に起きた。

 入学式から2週間が経ち、段々と落ち着いて来た生徒達。

 今日もいつもの様な1日が始まると思ったら、朝から保健室にパタパタ小走りして来る音が聞こえ、ノックもせずにガラッと扉が開いた。


 みのるは、お気に入りの生徒とキスをしていた最中だったので少し機嫌を悪くしたのだが、入って来た少女が彼の新しいおもちゃだと知ると、先程の生徒を即座に帰し彼女を招き入れた。

 「珍しいじゃない?夏凪華ちゃん?慌てちゃってどうしたの?」


 「じっ…実は…」


 彼女の話を簡単に説明するとこうだ。

 今日、登校したら下駄箱の中にラヴレターが入っていた。

 自分は、ラヴレターという物を今まで貰った事が無く、かつ男性アレルギーの為ラヴレターを見たらどんな症状が出るか分からない。

 なので、男性アレルギーの症状が出た時に直ぐに診てもらえるのと、恥ずかしいから手紙の中を読んで教えて下さい…との事らしい。


 「まぁ、良いけどね」


 そう言うと、みのるは手紙を開け中身を一読した後、真剣な表情で華に手紙を手渡す。

 

 「こういう物は、やっぱり貰った本人が確認した方が良いわ。返事もしないといけないし」


 そう言うと、みのるは華に手紙を手渡した。

 恐る恐る手紙を摘み上げ、深呼吸した後意を決して読むと、そこには愛の囁き等欠片もない『生徒会へご案内』という達筆な文字が書いてあった。

 自分の勘違いだった事が解った瞬間、恥ずかしさで顔は真っ赤に染まり目の前の草薙を見てみると、堪え切れないと言わんばかりに身体を震わせていた後、大笑いされてしまった次第である。






 「あ~ぁ、可笑しい。まさか生徒会からの手紙をラヴレターと勘違いするなんてね。それで、どうするの?」


 「どうするのと言われても、断ります。男性アレルギーの症状があるのに、男の人がいる教室で活動するなんて」


 「"だから"やるんじゃない?」


 「"だから"?」


 目を見て話せない所為で、終始窓を向きながら話していたのだが、今の言葉で草薙を一瞬見た後、直ぐ目線をまた窓に戻した。


 「アナタ、3年間で男性アレルギーを治したいんでしょ?それなら部活に入って何十人の男子生徒に囲まれて生活するより、生徒会の限られた人数で徐々に慣らしていった方が都合が良いんじゃないかしら?…それとも、何も行動しないで治ると思ってるんじゃないでしょうね?」


 それもそうだよね…。


 部活に入れば元々男子校だったのだから、ほぼ男子生徒なのは確実でそこに自分が入って活動するなんて事は出来そうに無い。

 かと言って、杏さんの様に手芸部を一から立ち上げたとして、そこに所属した場合ほぼ男子生徒との関わりは持てなくなるだろう。

 ならば、生徒会に所属して少ない人数で徐々に慣らしていくのが一番の得策では無いだろうか。


 「しかも、さっきの手紙を見た限りはアナタ書記でって打診されてるんでしょ?委員長みたいに表舞台に出る事も無いんだし、気楽に引き受けてみたら?」


 「……考えてみます」


 そう言って椅子から立ち上がり、扉に手を掛けた時に、もう一度草薙先生から声が掛かった。


 「あっ、そうそう。ウチの生徒会は先生か生徒からの推薦でしか入れ無いの。だから、それこそラヴレター貰うより確率が低いんじゃないかしら?物は試しよ!ねっ!!!」


 私はペコッとお辞儀をしながらも、草薙先生がウィンクをした後に、又肩を震わせながらそっぽを向いてしまったのを目の端で捉えた。

 きっとまたラヴレターの下りを思い出したんだろう。

 そんな草薙を見てないフリをして、保健室を後にした。


 確認の為に先程の手紙を見ると、2日後の放課後に生徒会室に集合と書いてある。

 その日が初顔合わせという事だろうか。

 草薙先生の言葉を念頭に置きながら、華は授業を受ける為教室へ足早に向かった。

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