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異世界温泉宿経営♨️ 〜「戦闘スキルをください!とお願いした女神がくれたのは、まさかの“銭湯スキル”でした〜  作者: 回胴めぐり


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【第83話】閉ざされた道


ダンジョンの奥へ進む三人。


先頭を歩くのは斥候の役割を果たすリゼ。


その少し後ろを大地が続き、エレナは二人の中央付近を歩いている。


そして――。


「……右です」


エレナが小さく声を上げた。


「この先に魔力反応があります」


「分かった」


大地が頷く。


エレナの探知魔法を道標にしながら、三人は慎重に歩みを進めていた。


「……来る」


リゼが短く告げる。


その直後。


ガサッ――!


横穴から魔物が飛び出してきた。


「グルァッ!」


「任せろ!」


大地が前へ出る。


メタルリザードが大地へ飛び掛かる。


しかし――。


その横から、リゼの短剣が閃いた。


シュッ!


「ギャッ!」


弾かれた魔物の動きが止まる。


そこへ大地の拳が叩き込まれた。


ドゴンッ!


魔物が壁まで吹き飛び、そのまま動かなくなる。


「次!」


リゼが叫ぶ。


「分かってる!」


今度は大地が一歩前へ出た。


正面から迫ってきた魔鉱狼の攻撃をかわし、その身体を殴り飛ばす。


吹き飛んだ魔鉱狼へ、リゼが一気に距離を詰める。


「――終わり」


ザシュッ。


一撃。


魔鉱狼が崩れ落ちた。


「……完璧だな」


大地が笑う。


「うん」


リゼも小さく頷く。


いつの間にか――。


二人の連携は、かなり自然なものになっていた。


大地が正面から敵を引きつける。


その隙にリゼが死角へ回る。


あるいは――。


リゼが敵の動きを止め、大地が一撃で仕留める。


互いに言葉を交わさなくても、相手が何をしようとしているのか分かる。


「……いい感じですね」


後ろから見ていたエレナが微笑む。


「私もそう思う」


リゼが答える。


「ダイチの攻撃は強力だけど、動きが洗練されていない分、隙も大きい」


「おい」


大地が振り返る。


「隙が大きいって言うなよ」


「でも事実」


「……まあ、そうだけど」


大地が苦笑する。


リゼも僅かに笑った。


「だから私が補う」


「なるほど」


大地は拳を握る。


「じゃあ、これからも頼む」


「うん」


短い言葉。


それだけだった。


けれど――。


そのやり取りには、確かな信頼が生まれていた。


◇


さらに奥へ。


エレナの探知魔法を頼りに、三人は歩みを進めていく。


「……近いです」


エレナが足を止めた。


「反応が、かなり近くなりました」


「バルガスたちか?」


「恐らく……」


エレナが目を閉じる。


「……はい。複数人の反応があります」


大地の表情が明るくなる。


「じゃあ、この先だな」


三人は足を速めた。


だが――。


しばらく進んだところで。


「……あれ?」


大地が足を止めた。


目の前には――。


道がなかった。


「……行き止まり?」


エレナが壁を見つめる。


そこには巨大な岩壁があるだけだった。


「でも……」


エレナが眉を寄せる。


「探知魔法の反応は、この先です」


「壁の向こうってことか?」


「はい」


大地が壁を軽く叩く。


コン。


鈍い音が響いた。


「……普通の岩壁に見えるけどな」


リゼは何も言わず、壁の周囲を調べ始めた。


しゃがみ込み、地面を見る。


壁を見る。


天井を見る。


そして――。


「……待って」


リゼが手を伸ばした。


「ここ」


「何かあるのか?」


大地が近づく。


リゼが指差したのは、壁の足元にある小さな窪みだった。


一見すると、ただの傷にしか見えない。


しかし――。


「これ……人工的に作られてる」


リゼが指で周囲をなぞる。


「この線も」


少し離れた場所には、細い溝が走っている。


「何かの仕掛けですね」


エレナもしゃがみ込む。


「魔力の痕跡があります」


「つまり……」


大地が壁を見る。


「隠し通路か?」


「可能性は高い」


リゼが答える。


「ただ……」


その声が少し低くなる。


「罠の可能性もある」


三人の間に、緊張が走った。


「ここを触ったら、何かが発動する仕組みかもしれない」


リゼは慎重に周囲を確認する。


「もしくは、ここで何かを操作すると壁が開く」


「それなら――」


大地が窪みに手を伸ばそうとした。


「待って!」


リゼが腕を掴んだ。


「触らないで」


「……分かった」


大地は素直に手を引いた。


リゼは仕掛けを見つめたまま、黙り込む。


やがて――。


「たぶん……」


リゼが静かに口を開いた。


「この仕掛けが、バルガスたちを閉じ込めたんだと思う」


「……」


大地とエレナが顔を見合わせる。


「ダンジョンの構造上、ここが隠し通路の入口なら、その先に空間があるはず」


リゼが続ける。


「エレナの探知魔法も、その向こうを捉えてる」


「つまり……」


エレナが呟く。


「この仕掛けを発動させれば、先へ進める可能性がある」


「そう」


リゼは頷く。


「でも――」


そこで言葉が止まった。


大地がリゼを見る。


「どうした?」


「……危険すぎる」


リゼは仕掛けから目を離さない。


「もし罠だったら、私たちも同じように閉じ込められるかもしれない」


「でも、バルガスたちはその先にいるんだろ?」


「そう」


「だったら――」


「分かってる」


リゼが遮った。


その声には、いつもの淡々とした響きがなかった。


「助けたい」


リゼは拳を握る。


「私も……助けたい」


その言葉の奥には、強い感情があった。


大地は黙ってリゼを見る。


「……あの時と状況が似てる」


リゼが俯く。


「あの時、安易に罠を踏んだ」


「え?」


「前のダンジョン探索で」


リゼは静かに続ける。


「私が罠を発動させた」


大地は何も言わない。


「その時、私は動けなくなった」


リゼの手が震える。


「助けてもらった」


「……」


「でも――」


リゼは唇を噛んだ。


「私だけが助かった」


その言葉が、重く響く。


「だから……今度は、助けたい」


リゼは仕掛けを見る。


「でも……」


長年、冒険者として生きてきた経験。


ダンジョンの恐ろしさを知っているからこそ――。


簡単には動けない。


「ここで私たちまで閉じ込められたら……」


リゼは大地とエレナを見る。


「二人まで危険になる」


「リゼさん……」


エレナも困ったように俯く。


彼女も迷っていた。


探知魔法では、人の反応を捉えている。


恐らく、バルガスたちはこの先にいる。


助けられる可能性はある。


しかし――。


仕掛けが罠だった場合。


三人とも閉じ込められる可能性もある。


「……どうしましょう」


エレナが小さく呟く。


誰も答えられなかった。


しばらく、沈黙が続く。


そして――。


大地が仕掛けを見つめた。


「俺が行く」


「……え?」


エレナが顔を上げる。


リゼも大地を見る。


「俺一人で、この仕掛けを調べる」


「ダメ」


リゼが即座に言った。


「危険すぎる」


「だからこそだ」


大地は二人を見る。


「俺なら、たとえ罠が発動しても耐えられる可能性が高い」


「でも……」


「それに」


大地は自分の拳を握る。


「さっきの魔物だって、俺一人で十分だった」


「……」


「まだ効能の時間も300分以上残ってる。ミレッタのポーションもある。だったら、二人を危険に晒すより、俺が一人で確認した方がいい」


リゼは黙り込む。


「ダイチさん……」


エレナも不安そうな表情を浮かべる。


大地は二人を優しく抱きしめて笑った。


「大丈夫」


その笑顔は――。


いつもの、どこか呑気なものだった。


「俺、意外と頑丈だから」


「……」


リゼは大地を見つめる。


その表情には、迷いが残っていた。


助けたい。


でも――。


今度こそ、自分のせいで誰かを危険に晒したくない。


その二つの思いが、胸の中でぶつかり合っていた。


そして大地は――。


ゆっくりと仕掛けへ近づいていく。


「待ってろよ、バルガス」


壁の向こうへ視線を向ける。


「今、助けに行くからな」


その手が――。


仕掛けへ伸びる。


果たして、この先に待ち受けているものとは――。


そして三人は、無事にダンジョンから生還できるのか。


まだ誰にも――。


分からなかった。

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