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異世界温泉宿経営♨️ 〜「戦闘スキルをください!とお願いした女神がくれたのは、まさかの“銭湯スキル”でした〜  作者: 回胴めぐり


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【第8話】温泉チートでいざ実戦!


大地は温泉に浸かりながら、ステータス画面を見つめていた。


「………」


「ちなみに、普段の私のステータスですが、レベル48で力は80程度です。私はあまり力に依存するタイプではありませんが、一般的な近接職でも、同レベル帯なら150前後かと……」


エレナは真剣な顔で呟く。


「レベル1で、この数値は普通ではありません」


「ですよね……」


大地は改めて自分のステータスを見る。


【HP】3,000

【力】500

【防御】500

【素早さ】500


確か、昨日ギルドで見た冒険者たちのステータスは、もっとずっと低かった。


もちろん、全員のステータスを見たわけではない。


それでも――。


「俺、昨日まで普通の人間だったんですけど……」


「今も種族は人間ですよ?」


「そこじゃないです」


大地は頭を抱えた。


「俺、戦闘系のスキルなんてもらってないですよね?」


「はい」


「なのに、この力って……」


大地は拳を握る。


「もしかして、俺ってめちゃくちゃ強くなってません?」


「……おそらく」


「おそらく!?」


大地は思わず叫んだ。


「いやいやいや! これ、絶対おかしいでしょ!」


「私に言われましても……」


エレナは困ったように笑う。


「ですが、先ほどからダイチさんの様子を見ていると、原因はこの温泉で間違いないと思います」


「……温泉に入っただけで?」


「はい」


「俺、ただ風呂に入っただけですよ?」


「そうですね」


「それで力が500?」


「そうですね」


「…………」


大地は温泉を見つめる。


湯気が、ゆらゆらと空へ昇っていく。


「……すごいな」


思わず笑みがこぼれた。


「温泉……すごい」


◇


「でも、一つ気になることがあります」


エレナが口を開いた。


「なんですか?」


「私のステータスは、そこまで上昇していません。力だけで言えば、80から100程度まで上がったくらいです」


「……あ」


大地も気づく。


先ほどエレナが温泉に足を浸けたとき、確かにステータスは上昇していた。


しかし、大地ほどではない。


「もしかして……」


大地は自分のスキル欄を見る。


【温泉効能強化 LV:EX】


「これのせいじゃないですか?」


「その可能性は高そうですね」


「俺が入った場合だけ、効果が最大になる……?」


「おそらく」


「じゃあ、この温泉に誰かを入れれば、全員が俺みたいになるわけじゃないんですね」


「そういうことだと思います」


大地はホッと胸を撫で下ろした。


「よかった……」


「よかった?」


――辺りが静まり返る。


「………ふっ……ふふふ……ふはははははっ!!」


「……ダ、ダイチさん……?」


エレナは、大地の急な豹変ぶりに狼狽する。


「来たぞ、来たぞ、来たぞっ!! 俺の時代が!!」


大地は勢いよく立ち上がった。


「時は大温泉時代! 温泉王に俺はなるっ!!」


「あ、あの……ダイチさん? 落ち着いてください!」


「ちょっくら、力試ししてきまーす!!」


大地は猛禽類のような勢いで温泉から飛び出すと、そのまま森へと駆け出した。


「ちょ、ちょっと! ダイチさん、せめて服を着てくださいー!」


エレナの静止を無視し、大地は森の中を縦横無尽に駆け回る。


その途中、自分の身体に起きている異変に気づいた。


「体が軽い! 自分の体じゃないみたいだ……!」


全身が羽のように軽い。


一歩踏み出すだけで、今までとは比べ物にならない速度で身体が前へ進んでいく。


「おっ! ちょうど良さそうな大きな岩があるな!」


眼前には、大地の身長の三倍はあろうかという巨大な岩があった。


「よし……いくぞ!!」


大地は拳を引く。


「星たちよ――ギャラ▪️ティカ▪️グ▪️ム!!」


凄まじい速度で繰り出された右ストレート。


次の瞬間――。


ドゴォォォン!!


巨大な破裂音とともに、大岩が粉々に砕け散った。


「く……くく……ふは……ふははははははは!」


大地は拳を見つめながら、高笑いを上げる。


「やれるじゃないか……!」


――その直後。


「……ん?」


背後から、何かの気配を感じた。


大地は咄嗟に飛び退く。


すると――。


目の前には、スライムの大群がいた。


「……これはこれは」


大地はニヤリと笑う。


「下等生物のスライムさんたちではありませんか……」


「前回は遅れを取りましたが、今回はそうはいきませんよ……!」


大地は拳を構える。


「今の私の銭湯力は――530,000です!」


「いきますよっ!」


「――でりゃあっ!!」


大地は、先ほどと同じ勢いでパンチを繰り出した。


――ぽむんっ。


スライムはパンチの衝撃を受けた。


……が。


何事もなかったかのように、その場でぷるぷると揺れている。


「………」


「あれ?」


大地が固まる。


すると――。


頭の中で、聞き慣れた音が鳴った。


――ピコン。


『強化限界時間、三分が経過したため、能力値が変動します』


「ちょ、ちょっと、なんで!?」


――ぶるんっ!


「……来るな」


スライムが一匹、ぷるんと跳ねた。


――ぶるぶるぶるんっ!!


「………っ」


大地の顔が引きつる。


「来るなぁぁぁぁぁぁあ!!!」


大地はスライムの大群に追われながら、一目散に森を駆け出した。


全裸で奇声を上げながら、来た道を必死に引き返す。


「エレナさーーん!! 助けてくださーーーい!!」


その声に反応して、木の陰から長い耳をぴんと立てた白銀髪のエルフが顔を出す。


「ダイチさん! 大丈夫ですか?」


声の方向へ顔を向けたエレナは――。


全裸のまま、必死の形相で走ってくる大地を視界に捉えた。


「ちょ、ちょっとダイチさん!?」


エレナの顔が真っ赤になる。


「そんなお姿で、こっちに来ないでください!」


「スライムの大群に追われてて、それどころじゃないんですよー!!」


「いやぁぁぁぁぁぁぁ!!」


エレナ、大地、そしてスライム。


三者は、まるで奇妙な列車のような隊列を組みながら、森の中を駆け回るのだった。

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