【第70話】初めての温泉旅館
それから、さらに数日。
温泉旅館のプレオープンに向けた準備は、最終段階へと入っていた。
建物はほぼ完成している。
料理の試作も進んでいる。
アメニティも揃い始め、魔道具の調整も順調。
人員は揃っていないものの、オペレーションのマニュアルは作成済みであり、エレナとも共有している。
そして――。
「本日は、お客様としてお願いしますわ」
セリーナが、旅館の正面門の前に立っていた。
「……お客様として?」
大地が首を傾げる。
「はい」
セリーナは優雅に微笑む。
「本日はアーベル商会の代表ではなく、一人の宿泊客として、この旅館を最初から最後まで体験させていただきます」
「なるほど」
大地は頷いた。
プレオープン前のロケーションテスト。
実際に客として利用してもらい、接客、料理、施設、導線などに問題がないか確認する。
「それなら、俺も本気で案内しないとな」
「期待しておりますわ」
そう言って、セリーナは門をくぐった。
◇
「いらっしゃいませ」
正面玄関で待っていたのはエレナだった。
いつものエレナとは少し違う。
姿勢を正し、穏やかな笑顔を浮かべている。
さながら、高級旅館の美人女将のような雰囲気を醸し出している。
「本日は当旅館をご利用いただき、ありがとうございます」
「まあ……」
セリーナが目を細める。
「エレナが女将役ですのね」
「はい」
エレナは微笑む。
「本日は、私が責任を持ってご案内いたします」
「では、よろしくお願いいたします」
二人が向かい合う。
普段から互いの素性を知る二人だが――。
今は、あくまで客と女将。
「セリーナ様、こちらへどうぞ」
「ええ」
その様子を少し離れた場所から見ていた大地は、思わず感心する。
「……なんか、本物の旅館みたいだな」
こうして。
温泉旅館、初めての本格的なロケテストが始まった。
◇
まずは館内の案内。
大地が施設について説明していく。
「こちらが休憩所です」
「風呂上がりにゆっくりできる場所ですのね」
「はい。飲み物も用意しています」
「こちらは?」
「食事処です」
そして。
「こちらが温泉エリアです」
「ええ。以前にも利用させていただきましたわね」
「今日は改めて、お客様目線で確認してもらいます」
「承知しました」
さらに館内を進む。
「こちらが遊技場です」
「遊技場?」
セリーナが首を傾げる。
「ここでは卓球なんかができます」
「卓球……」
セリーナは興味深そうに中を覗き込む。
「故郷の温泉旅館では定番なんですよ」
「まあ」
セリーナは小さく笑った。
「では、後ほどぜひ」
「もちろん」
大地も笑う。
◇
まずは温泉。
「では、こちらから」
ミレッタが温泉エリアで待っていた。
「温泉の基本的な入り方は、前にエレナと一緒に入った時に聞いてるだろ?」
「ええ」
「なら簡単に確認するだけでいいな」
ミレッタは浴場内を指差す。
「身体を洗ってから湯船に入る。長時間入りすぎない。無理をしない。それだけ覚えておけばいい」
「分かりましたわ」
セリーナは頷いた。
そして――。
湯船へ。
「……」
身体を湯に沈める。
「……やはり、気持ちいいですわね」
「だろ?」
大地も笑う。
「この旅館の一番の目玉だからな。大地のスキルで個別に泉質を変えている。魔力増幅、身体能力強化、疲労回復、生命力回復……色々あるぜ」
しばらく温泉を楽しんだあと、セリーナは浴場を出た。
そして――。
「こちらが浴衣です」
待っていたエレナが浴衣を手渡す。
「浴衣……」
セリーナが手に取る。
「これを着るのですか?」
「はい」
エレナが丁寧に着方を説明する。
「まず、左側を上にして重ねます」
「こうですのね?」
「はい。帯はこの位置です」
エレナが手伝いながら整えていく。
やがて――。
「完成です」
セリーナが鏡を見る。
「まあ……」
そこに映っていたのは、普段の華やかなドレス姿とは違う自分。
浴衣姿。
帯を締めたことで、どこか柔らかな印象になっている。
「……不思議ですわ」
セリーナは袖に腕を通す。
「とても楽ですのね」
「温泉旅館では、これを着たまま館内を歩いていただいて大丈夫です」
「なるほど……旅館の雰囲気にとても合っていますわ」
セリーナは少し歩いてみる。
「気に入りましたわ」
◇
そして――昼食。
食事処へ案内されたセリーナの前に並んだのは、日本の定食だった。
白米。
味噌汁。
焼き魚。
だし巻き卵。
ほうれん草のおひたし。
漬物。
そして、小鉢には野菜の煮物。
「……これが、ダイチ様の故郷の定食。職業柄、様々な料理を食べてまいりましたが、こんな料理は初めてですわ」
「ダイチさんとリゼさんが研究して、再現しているんです」
リゼが料理を運んでくる。
「どうぞ」
「いただきます」
セリーナは箸を手に取る。
焼き魚を少しほぐす。
一口。
「……」
目を閉じる。
「……美味しい」
続いて味噌汁。
だし巻き卵。
煮物。
おひたし。
一つずつ味わっていく。
「どれも派手ではありませんのに……」
「はい」
「一つ一つの味が、とても丁寧で優しい味付けですわ」
大地は嬉しそうに笑った。
「リゼが頑張ってくれたんですよ」
「素晴らしい料理人ですわね」
リゼは少しだけ嬉しそうに頷いた。
セリーナは最後まで箸を止めることなく、綺麗に料理を食べ終えた。
「……ご馳走様でした」
「ありがとうございます」
リゼが一礼する。
そして――。
「では、午後は少し身体を動かしてみましょうか」
大地が立ち上がった。
「身体を?」
「遊技場です」
「ああ」
セリーナが思い出したように笑う。
「卓球ですわね」
「そうです」
◇
遊技場。
中央には、卓球台。
大地はラケットを二本手に取った。
「じゃあ、まずは持ち方から」
「はい」
セリーナへラケットを渡す。
「こう持ってください」
「こうですのね?」
「そうそう」
大地が隣に立ち、手の位置を確認する。
「それから、ボールは――」
カコン。
「……」
セリーナが打ったボールは、台を大きく外れて飛んでいった。
「あら」
「惜しい!」
「今のは惜しかったのでしょうか?」
「……まあ、初めてなら」
「ふふ」
何度か練習を繰り返す。
最初こそ苦戦していたセリーナだったが、少しずつコツを掴んでいく。
「こう……ですわね」
カコン。
今度は綺麗に台の上へ。
「おお!」
「できましたわ!」
セリーナが嬉しそうに笑う。
「上手いじゃないですか!」
「では、もう一度」
カコン。
カコン。
次第にラリーが続くようになる。
「楽しいですわ!」
「でしょう?」
大地も笑う。
しかし――。
夢中になって身体を動かしているうちに、浴衣の襟元が少しだけ緩み、豊かな胸が露わになっている。
「……」
大地の視線が止まる。
「……ダイチ様?」
「え?」
「先ほどから、ラケットではなく私の方を見ていませんか?」
「い、いや!」
大地は慌てて目を逸らす。
「そんなことは――」
「ふふ」
セリーナは自分の浴衣を見下ろす。
そして、少しだけ襟元を整えた。
「……なるほど」
「何がですか?」
「いえ」
セリーナは楽しそうに微笑む。
「ダイチ様は、こういう姿がお好きなのですね?」
「……」
「随分と分かりやすいですわ」
「いや、その……」
「ふふ」
セリーナが一歩近づく。
「でしたら、もう少し近くで見ます?」
「ちょ、セリーナさん!?」
その瞬間。
「ダイチさん」
背後から、冷たい声が響いた。
「……」
大地が振り返る。
そこには――。
エレナ。
ミレッタ。
リゼ。
三人が並んで立っていた。
「…………」
大地は固まる。
エレナが微笑む。
「卓球を教えているのですよね?」
「も、もちろん!」
「……セリーナさんの浴衣を見ながら?」
「いや、それは――」
ミレッタが腕を組む。
「ダイチ、お前……」
「はい」
「昼間っから何やってんだ?」
「……すみません」
リゼが無表情で呟く。
「……ダイチ、えっち」
「リゼまで!?」
セリーナは口元を隠して笑っている。
「ふふふ」
「笑ってないで助けてくださいよ!」
エレナがため息をつく。
「ダイチさん」
「はい……」
「卓球の指導に集中してくださいね?」
「……はい」
「私たちも見ていますから」
「余計に緊張するんだけど……」
ミレッタが笑う。
「ほら、さっさと教えろ」
「はいはい」
大地は再びラケットを構えた。
セリーナはそんな大地を見て、楽しそうに微笑んでいた。
◇
卓球を終える頃には――。
「……少し汗をかきましたわ」
セリーナが額を拭う。
「思ったより運動になりますのね」
「結構動きますからね」
大地が笑う。
「それじゃあ――」
「温泉、ですわね?」
セリーナが先に言った。
「正解」
大地は頷く。
「せっかく温泉旅館なんだから、汗をかいたら温泉に入らないとな」
「では、もう一度楽しませていただきますわ」
◇
再び温泉エリア。
今度はミレッタが案内する。
「さっき入ったばかりだから、無理はするなよ」
「分かっていますわ」
身体を流し、湯船へ。
「……はぁ」
セリーナが肩まで浸かる。
「先ほどとは、また違った気持ちよさですわね」
「運動した後だからだろうな」
「なるほど……」
そして――。
「これがサウナだ!」
ミレッタが扉を開ける。
◇
「……暑いですわね」
サウナ室。
セリーナは額に浮かぶ汗を拭う。
「身体の中から温まっていく感じがしますわ」
「基礎代謝を改善して、デトックス効果があるんだ。それがサウナの魅力なんだ」
ミレッタが説明する。
「汗をかいて身体を温めたら、次は水風呂」
「ええ」
ミレッタが香りのオイルを取り出す。
「調整したハーブの香りにする。リラックス効果があるんだ」
サウナストーンへ少量を垂らす。
じゅわっ。
爽やかな香りが室内へ広がる。
「……!」
セリーナが目を閉じる。
「素晴らしい香り……」
「エレナが作ったやつだ」
「本当に多才ですわね」
やがて十分に身体が温まる。
「では、水風呂へ」
「はい」
セリーナは水風呂へ入る。
「……っ!」
冷たい水が身体を包む。
しかし、しばらくすると――。
「……先ほどより平気ですわ」
「慣れてきたな」
水風呂から上がり、休憩椅子へ。
静かな時間が流れる。
「……気持ちいい」
セリーナが目を閉じる。
それから再びサウナへ。
そして水風呂。
さらに休憩。
何度か繰り返す。
「……」
最後の休憩を終えたセリーナは、ゆっくり目を開けた。
「身体が……軽いですわ」
「それがサウナの良さだ」
「なるほど……」
ミレッタは満足そうに頷いた。
「気に入ったようだな」
「ええ。これは人気が出そうですわ」
◇
温泉エリアを出る。
休憩所へ戻ると、大地が待っていた。
「お疲れ様でした」
「ダイチ様」
「どうでした?」
「非常に素晴らしかったですわ」
そして。
大地が指差す。
「じゃあ、これも」
そこにあるのは、自動販売機。
「例の魔道具ですわね」
「そうです」
セリーナが硬貨を入れる。
商品を選ぶ。
ガコン。
「……出ましたわ」
取り出したのは――。
コーヒー牛乳。
「温泉上がりの定番です。故郷では腰に手を当てて一気に喉に流し込むんです」
セリーナは瓶を手に取る。
栓を開ける。
腰に手を当てる。
そして――。
ごくっ。
「……!」
目を見開く。
「これは……」
「どうです?」
「とても冷えていて美味しいですわ」
もう一口。
「甘さと苦味がちょうどいい……」
大地は満足そうに笑った。
「それなら成功ですね」
「ええ」
セリーナは瓶を眺める。
「こういうところまで含めて、温泉旅館なのですね」
「そういうことです」
◇
そして――。
夜。
夕食の時間。
昼とはまったく違う料理が並べられていく。
先付。
季節の野菜を使った小鉢。
椀物。
澄んだ出汁の中に、きのこや野菜、白身魚が浮かんでいる。
向付。
新鮮な魚を使った刺身。
焼物。
香ばしく焼き上げた魚。
煮物。
根菜や豆腐を優しい味付けで炊いたもの。
揚物。
山菜と野菜の天ぷら。
そして最後に――。
炊き込みご飯。
香の物。
味噌汁。
水菓子。
果物と小さな甘味。
セリーナは、一品ずつ運ばれてくる料理を眺めていた。
「……」
真剣な表情だった。
商談の時ですら見せないほど、真剣な表情である。
一口。
そして、また一口。
「……これは」
セリーナが呟く。
「料理というより……芸術ですわね」
「懐石料理っていう、故郷のコース料理みたいなものです。季節ごとの旬のものを調理して、味覚でも季節を味わってもらうんです」
大地が説明する。
「素材、器、盛り付けまで含めて楽しむ料理なんです」
「……」
セリーナは刺身を見つめる。
「この魚……こんな食べ方をしたことがありませんわ」
「醤油を少しだけ」
「ええ」
一口。
「……」
続いて天ぷら。
「衣が軽い……」
そして椀物。
「この汁……」
セリーナが驚いたように顔を上げる。
「先ほどの出汁ですのね?」
「よく分かりましたね」
「もちろんですわ」
セリーナは微笑んだ。
「商人ですもの。良いものの違いくらい分かります」
大地は思わず笑う。
食事を終える頃には――。
セリーナは心から満足した表情を浮かべていた。
「……素晴らしい一日でしたわ」
◇
夕食を終えたセリーナは、エレナに客室へ案内された。
「こちらが本日お泊まりいただくお部屋です」
襖を開ける。
「……」
セリーナは言葉を失った。
畳。
障子。
低い机。
そして――。
部屋の中央には、綺麗に敷かれた布団。
「……もう布団まで」
「はい」
エレナが微笑む。
「お休みになる時間になったら、こちらへ横になっていただくだけです」
「……至れり尽くせりですわね」
セリーナは部屋の中を見渡す。
窓の外には庭。
夜の池に月が映っている。
「ここまで一日を通して体験すると……」
セリーナは小さく息を吐いた。
「この旅館が、なぜこれほど多くの人を惹きつける可能性があるのか……少し分かった気がしますわ」
「本当ですか?」
「ええ」
セリーナは微笑む。
「これは、商人としても非常に興味深いですわ」
◇
夜。
コンコン。
大地の休憩している部屋の扉が鳴った。
「はい?」
「ダイチ様。少しよろしいでしょうか?」
「セリーナさん?」
扉を開ける。
そこには浴衣姿のセリーナが立っていた。
「どうしました?」
「少しだけ……お酒をご一緒しません?」
「晩酌?」
「ええ」
セリーナが徳利とお猪口を持ち上げる。
「せっかくの温泉旅館ですもの」
「それなら、少しだけ」
二人はセリーナの客室へ移動した。
窓際に並んで座る。
窓の外には、魔道具の灯に照らされた庭。
池。
岩。
針葉樹。
静かな夜の景色。
「……綺麗ですわ」
セリーナが呟く。
「昼間とは、まるで別の場所みたいですね」
「夜の旅館って、いいですよね」
大地も酒を口にする。
「こうして見ると、本当に作ってよかったと思います」
「ええ」
セリーナも盃を傾ける。
「今日一日、客として過ごしてみて――」
「どうでした?」
セリーナは少し考える。
「……完璧ではありません」
「おっと」
「まだ改善できるところもございます」
「やっぱり」
「ですが」
セリーナは大地を見る。
「それ以上に――」
少し頬を赤らめる。
「もう一度泊まりたいと思いましたわ」
「……」
大地は笑う。
「それなら、よかった」
「ダイチ様」
「はい?」
セリーナが少しだけ距離を詰める。
「今日一日、ずっと私を案内してくださいましたわね」
「そうですね」
「卓球も教えていただきました」
「はい」
「料理も説明してくださいました」
「はい」
「……温泉以外は、ずっと一緒でしたわ」
「まあ、そうですね」
セリーナは盃を置く。
「でしたら――」
少しだけ身体を大地へ向ける。
「最後くらい、私のことをもう少し見てくださってもよろしいのでは?」
「……」
大地は一瞬、言葉を失った。
セリーナの頬は、酒のせいなのか紅く染まり、目は虚ろながらも蠱惑的な笑みを浮かべている。
浴衣は少しはだけており、洗練された肢体は月明かりに照らされて、妖しい雰囲気を放っている。
「……セリーナさん?」
「はい」
「酔ってません?」
「少しだけ」
「ですよね……」
セリーナはくすりと笑う。
「ダイチ様……」
向かい合う机の下から何かが大地の浴衣越しに下腹部を上下に撫でる。
「ーーーーーーっ!」
大地は急な刺激に全身を震わせる。
机の下に目を向けると、セリーナの素足が大地の下腹部に伸びている。
「……あらあら?……ダイチ様…どうされましたか?」
「……くっ…セ、セリーナさん…」
セリーナの目は大地の反応を楽しむように笑みを浮かべ、美味しそうな果実でも見つけたように上唇を官能的に舐める。
「……あら…ダイチ様…お加減が悪いようですが大丈夫でしょうか?」
セリーナは口を開きながらも、下腹部を弄る足の指先は敏感な部分を的確に擦り、緩急を付けながら速度を上げていく。
「……ぁあ……う、うぁ…」
「……いかがされました?大地様情けない声を出して…」
客室には隠微な水音と二人の荒くなった呼吸だけが響いている。
大地の呼吸がペースを上げて、さらに荒くなるのと比例してセリーナの指先も速度を上げる。
「ーーーーーーーーーッ!」
大地は倦怠感に包まれ、白濁の意識の中、呆然としている。
「……あらあら…大地様汚れてしまいましたわね…綺麗にして差し上げますわ」
「……い、いや…だ、大丈夫です!」
セリーナは呼吸を荒くして、淫靡な笑みを浮かべながら、焦る大地を押し倒した。
「きゃーーーーーーーーーッ!」
大地の浴衣は剥ぎ取られ、二人は覆い被さるように官能の闇に溶けていった。
◇
早朝
「………」
「……あら?」
朝の眩しい日差しに起こされたセリーナは、目を擦りながら、周りを見渡す。
机には、空になった数本の徳利とお猪口が乱雑に配置されている。
「……まぁ…お酒を飲んで酔って寝てしまったようですわね」
昨晩の自分の行動を逡巡する。
「……確か…晩酌をしていて、一人ではつまらないので、ダイチ様を呼んで…」
ふと隣を見てみると、全裸でミイラのように干からびた大地が倒れている。
「ダイチ様!大丈夫ですか!?」
体を揺すると、消え入りそうな細い声で返事がある。死んではいないようだ。
「……は、はぃ………大丈夫です…」
「私、お酒を飲んでからよく覚えてないんです」
大地は焦るセリーナを横目に、乾いた笑いを浮かべる。
「………は、はは……そ、そうなんですか」
「た、大変!ダイチ様が…どうしましょう!」
「……だ、大丈夫ですから……セリーナさん……人前ではお酒控えましょうね…」
大地はその一言を最後に、再び意識が遠のいていった。




