【第5話】いざ冒険者ギルドへ
金竜王の羽のシェフの作る料理はどれも美味しく、飽きることがない。
これは毎日通っちゃうかもなぁ……
一通りの飲み食いは終わるも、エレナの説明は終わらない。
「それから――」
エレナは話を続けた。
「この世界では、魔物が存在します」
「それは知ってます」
大地は苦い顔をする。
「昨日、スライムにボコボコにされました」
「ボコボコ……?」
「正確には、木の枝で応戦するも、ダメージも与えられずを逃げました」
「…………」
エレナが口元を押さえる。
「……ふふっ」
「笑わないでくださいよ!」
「すみません」
「こっちは命懸けだったんですよ!」
「最初は仕方ありませんよ。
装備も整っていらっしゃらなかったようですし」
「もう少しやれると思ったんですけど、才能ないんでしょうか…」
「……なるほど」
エレナは少し考える。
「それなら、冒険者として活動するには、まず身体を鍛える必要がありますね」
「やっぱりそうですよね……」
大地は肩を落とした。
「ちなみに、魔物って倒すとお金になるんですか?」
「はい」
エレナが頷く。
「魔物の素材はギルドで買い取ってもらえます」
「肉も?」
「食用になる魔物なら」
「…………」
大地は箸――ではなく、木製のフォークを握りしめる。
「やっぱり魔物を倒せるようにならないとな……」
「ですが」
エレナが言った。
「冒険者の仕事は、討伐だけではありません」
「……そうなんですか?」
「薬草採取、素材採取、荷物の運搬、護衛、捜索など、様々な依頼があります」
「薬草採取……」
「それなら、今の俺でもできますか?」
「はい」
エレナは微笑みながら頷いた。
「まずはそこから始めるのが良いと思います」
「お願いします!」
◇
食事を終えると、二人は店を出た。
「それでは、冒険者ギルドへ向かいましょう」
「はい!」
大地はエレナの後ろを歩く。
街の大通り。
人々が行き交い、商人が声を張り上げている。
「……本当に異世界なんだな」
改めて周囲を見回す。
「ところで、エレナさん」
「はい?」
「冒険者ギルドって、登録料とか必要なんですか?」
「少額ですが必要です」
「…………」
大地が固まった。
「……俺、お金ないんですけど」
「大丈夫ですよ」
「え?」
「初回登録料くらいなら、私が立て替えます」
「いや、それは……」
「今後、薬草採取で稼げば返せますから」
エレナは微笑む。
「それに――」
「?」
「ダイチさんをここまで連れてきたのは私ですから」
「…………」
「最後まで面倒を見るくらいはしますよ」
「……ありがとうございます」
大地は少し照れながら頭を下げた。
◇
しばらく歩くと。
大きな建物が見えてきた。
木製の看板には、剣と盾のような紋章が描かれている。
「ここが冒険者ギルドです」
「おお……!」
大地のテンションが一気に上がる。
「本物だ!」
「本物?」
「いや、なんでもありません!」
大地は勢いよく扉を開けた。
ギィィィ……。
中には大勢の冒険者がいた。
武器を腰に下げた男。
大きな斧を背負ったドワーフ。
弓を持った獣人。
受付には何人もの職員が並んでいる。
「すごい……」
大地は目を輝かせた。
「こういうところで冒険者登録するのか……!」
「ダイチさん」
「はい!」
「まず、落ち着いてください」
「はい……」
二人は受付へ向かった。
「冒険者登録をお願いします」
エレナが受付嬢に声をかける。
「はい。新規登録ですね」
受付嬢が大地を見る。
「お名前をお願いします」
「ユモリ・ダイチです」
「種族は?」
「人間です」
「分かりました」
受付嬢は書類を差し出した。
「こちらに必要事項をご記入ください」
「…………」
大地は固まった。
「…………」
「ダイチさん?」
「いや……」
大地は書類を見る。
文字は読める。
当然だ。
女神クレアから与えられた加護によって、この世界の言葉を読み書きできるようになっているようだ。
「どうしました?」
「いえ、なんでもありません」
大地は必要事項を書き込んでいく。
名前。
種族。
年齢。
「……これでいいですか?」
「はい。問題ありません」
受付嬢は書類を確認する。
「それでは登録料として――」
エレナが財布を取り出した。
「私が払います」
「え?」
大地が慌てる。
「エレナさん、やっぱり――」
「今はいいんです」
「でも……」
「薬草採取で稼いだら返してください」
エレナは笑った。
「それなら問題ないでしょう?」
「…………」
大地はしばらく彼女を見つめた。
「……分かりました」
「はい」
登録料を支払い、簡単な手続きを終える。
そして――。
「こちらが冒険者証になります」
小さなカードが渡された。
大地はそれを受け取る。
「…………」
冒険者証。
自分がこの世界で生きていくための、最初の一枚。
「……よし」
大地は拳を握った。
「まずは一歩目だ」
◇
「では、次は薬草採取です」
「はい!」
ギルド内に掲示されている依頼書の前へ向かう。
そこには大量の依頼が貼られていた。
「薬草採取はこれです」
エレナが一枚の依頼書を指差す。
【薬草採取】
指定された薬草を十束納品。
報酬――銀貨数枚。
「これなら……」
大地は目を輝かせる。
「俺にもできそうですね」
「ええ」
エレナは頷く。
「ただし、森には魔物がいます」
「…………」
「ですから、できるだけ街の近くで採取してください」
「分かりました」
「危険を感じたら、すぐに逃げてください」
「はい!色々とありがとうございます!」
大地は依頼書を受け取り、エレナと別れると、
エレナにお礼を告げ、クエストの準備を整えた。
「よし……」
冒険者になった。
初めての仕事も決まった。
「……なんか、やっと異世界生活が始まった気がする」
「エレナさんに甘えてばかりじゃいられないぞ!」
大地は笑った。
しかし――。
彼はまだ知らない。
この何気ない薬草採取が。
自分の人生を大きく変える、ある場所との出会いへ繋がっていることを。




