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異世界温泉宿経営♨️ 〜「戦闘スキルをください!とお願いした女神がくれたのは、まさかの“銭湯スキル”でした〜  作者: 回胴めぐり


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【第39話】夢の実現へ


――三日後。


クレーベルの街は、いつもと変わらない朝を迎えていた。


大通りを歩きながら、大地は隣のエレナへ視線を向ける。


「いよいよだな」


「はい。今日が査定結果を受け取る日ですね」


「どれくらいになるんだろうな」


先日の鉱山で討伐した魔鉱巨獣。


そして、そこで回収した大量の魔鉱石。


あれだけの量だ。


かなりの金額になることは予想できる。


「まあ、期待しすぎるのもよくないか」


「そうですね」


二人は冒険者ギルドへ入った。


受付へ向かうと、職員がすぐに気づく。


「あ、お二人とも。お待ちしておりました」


「査定が終わったんですか?」


「はい。ギルドマスターがお待ちです」


案内された応接室には、バルガスがいた。


「来たか」


「お待たせしました」


「いや、こっちも準備に時間がかかってな」


バルガスは机の上に置かれた書類を手に取った。


「まず、依頼達成報酬だ。魔鉱巨獣の討伐を含め、大金貨5枚」


「5枚……」


そして、もう一枚の書類を取り出す。


「それから、魔鉱石の買取金額」


バルガスが一度、咳払いをする。


「大金貨200枚だ」


「……200?」


「合わせて大金貨205枚」


「…………」


大地は固まった。


エレナも目を見開いている。


大金貨一枚は約百万円相当。


つまり――。


「……二億円」


思わず日本円で計算してしまう。


「に、におく……?」


エレナが呟く。


すると、バルガスが突然机を叩いた。


――ドンッ!


「そこだ!」


「え?」


「その金を三日で用意した俺の苦労を聞け!」


「……はい?」


バルガスが立ち上がる。


「今回の魔鉱石は量が量だ! ギルドだけじゃ到底払えねぇ!」


「なるほど……」


「だから鉱石商を呼んだ! 商会も呼んだ! 商人ギルドにも頭を下げた!」


バルガスは指を一本ずつ立てていく。


「朝から晩まで金の工面! 値段の交渉! 書類の確認! 昨日なんて飯を食う暇もなかった!」


「……すみません」


「謝るな!」


バルガスが胸を張る。


「俺が三日三晩走り回って、ようやく集めた大金貨205枚だ!」


そして、大地を指差す。


「その間、お前ら何してた?」


「……温泉に入ってました」


「…………」


「家具も作ってました」


「…………」


バルガスが遠い目をする。


「……こ、こいつら…!」


「ふふっ」


エレナが思わず笑う。


「笑うな! こっちは必死だったんだぞ!」


「す、すみません」


バルガスは大きく息を吐く。


「まあいい。お前らが命懸けで手に入れたもんだ。正当な対価を払うのがギルドの仕事だからな」


「ありがとうございます」


大地は頭を下げる。


「ただし!」


バルガスが再び大地を指差す。


「今度、俺にも温泉を使わせろ!」


「もちろんです」


「本当だな!?」


「はい」


「よし!」


バルガスは満足そうに頷いた。


「じゃあ、こいつを持っていけ!」


大金貨205枚。


大地はそれをアイテムボックスへ収納する。


「……これで」


大地はエレナを見る。


「土地が買えるな」


「はい」


エレナも嬉しそうに微笑んだ。


二人は礼を告げ、冒険者ギルドを後にした。


次に向かうのは――商人ギルド。


三日前に依頼していた、温泉周辺の土地調査の結果を聞くためだった。


◇


商人ギルドへ到着すると、受付で名前を告げる。


「お待ちしておりました。土地の調査結果が出ております」


「本当ですか?」


「はい。こちらへどうぞ」


案内された部屋で、マルクが一枚の地図を広げた。


そこには、クレーベルから少し離れた山間部が描かれている。


「こちらが、ご希望されていた土地です」


「……ここ」


大地は地図を覗き込む。


「温泉も含まれています」


「よかった……」


エレナが安堵の息を漏らす。


「さらに周辺を調査したところ、この一帯は現在、特に利用計画もなく売却可能となっております」


「どれくらいの広さですか?」


「およそ二平方キロメートルです」


「二平方キロ……」


想像以上の広さだった。


「それで、価格は?」


マルクが淡々と答える。


「大金貨十枚程度です」


「…………え?」


大地は聞き返した。


「大金貨十枚です」


「二平方キロで?」


「はい」


「温泉も含めて?」


「はい」


大地はエレナを見る。


「……安くないか?」


「私もそう思います」


職員が苦笑する。


「街からかなり離れていますし、山間部で魔物の出没も確認されています。そのため、長らく買い手がつかなかった土地なんです」


「なるほど……」


普通なら、わざわざそんな場所を買おうとは思わない。


しかし――。


大地たちにとっては違う。


温泉がある。


人里から離れている。


そして、ユズキのおかげで周囲の魔物も近寄りにくくなっている。


「……俺たちには、ちょうどいいな」


「はい」


エレナが頷く。


大地は迷わなかった。


「買います」


「承知しました」


契約書を確認し、必要事項へ署名する。


そして大金貨十枚を支払う。


「……これで手続きは完了です」


マルクが書類を整える。


「土地の所有権は、正式にお二人へ移りました」


「…………」


「お二人が作る温泉宿ができましたら、是非ご報告をお願いします。もちろんお困りのことございましたら、是非ご相談いただけたらと思います」


「ありがとうございます!」


大地は地図を見る。


そこには、自分たちがこれから暮らす土地が描かれている。


温泉も。


森も。


これから作る宿も。


全部、ここから始まる。


「……買っちゃったな」


大地が呟く。


「はい」


エレナが微笑む。


「本当に、買ってしまいましたね」


エレナが笑う。


「でも、これで――」


大地も頷いた。


「ああ」


もう、ただの夢じゃない。


「宿を作れる」


二人は顔を見合わせる。


そして――。


自分たちの土地へ向かって歩き始めた。

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