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異世界温泉宿経営♨️ 〜「戦闘スキルをください!とお願いした女神がくれたのは、まさかの“銭湯スキル”でした〜  作者: 回胴めぐり


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【第2話】異世界冒険譚のはじまり


「…………」


大地は森の中に立っていた。


「…………」


右を見る。


木。


左を見る。


木。


後ろを見る。


やっぱり木。


「…………」


空を見上げる。


青い空。


白い雲。


聞いたことのない鳥の鳴き声。


「…………」


大地は深く息を吐いた。


「……異世界だな」


先ほどまでいた真っ白な空間。


そこで出会った女神。


そして――


「このクソ女神がぁぁぁぁああぁぁぁぁ!!!」


最後に叫んだ記憶。


「…………」


思い出すだけで腹が立つ。


「……あのクソ女神っ!変換ミスしやがって…次会ったら胸のひとつでも揉んでやる!」


「まぁ死んだままより、ずっといいよな……」


自分は一度死んだ。


そして、別の世界で人生をやり直すことになった。


しかも。


「スキル……か」


大地はステータス画面を呼び出した。


目の前に半透明の画面が浮かび上がる。


【ステータス】


氏名:ユモリ ダイチ

種族:人間

LV:1


HP:30

MP:10


力:5

防御:5

素早さ:5

魔力:2

魔法防御:4

運:10


【スキル】

温泉サーチLV1

泉質効能調整LV1

温泉効能強化LV EX


「…………」


何度見ても同じだった。


「温泉……」


大地は額を押さえる。


「よりによって温泉……」


戦闘系スキルだと思っていた。


しかし、実際に与えられたのは温泉に関するスキルだけ。


「……こんなスキル何に使えって言うんだよ」


大地は気持ちを切り替える。


「問題は――」


グゥゥゥゥ。


腹が鳴った。


「…………」


「腹減ったな」


そう。


転生してから、一度も食事をしていない。


「まずは食料を探さないと」


周囲を見回す。


トゲトゲとした見た目の木の実。


カラフルな色味のキノコ。


見たこともないような植物。


「…………」


「……食べていいのか分からん」


毒だったら終わる。


「となると……」


大地は拳を握った。


「やっぱり魔物だな」


異世界といえば魔物。


魔物を倒せば、肉や素材が手に入る。


素材を売れば金になる。


金があれば飯が食える。


完璧だ。


「よし」


大地は森の中へ歩き始めた。


⸻


しばらく歩いていると。


ガサッ。


「…………!」


茂みが揺れた。


大地は足を止める。


「……来たか」


異世界生活初の魔物。


慎重に茂みを見る。


ガサガサッ。


そして――


「ぷるっ」


「…………」


青い。


丸い。


ぷるぷるしている。


「…………」


「スライム?」


スライムといえば、最弱モンスターの代表格。


「…………」


大地は足元に落ちている木の枝を拾った。


「……これなら」


枝を握る。


「俺でもいけるだろ」


スライムが近づいてくる。


「よし……」


大地は構えた。


「いくぞ!」


振り下ろす。


バシッ!


「…………」


スライムが少しだけへこんだ。


「…………」


ぷるん。


元に戻った。


「…………」


大地は固まった。


「……もう一回」


バシッ!


ぷるん。


「…………」


「おかしくない?」


スライムは元気そうだ。


大地はステータスを思い出す。


力5。


「…………」


「……もしかして俺、めっちゃ弱い?」


その瞬間。


スライムが跳ねた。


「うわっ!」


大地は慌てて避ける。


ドンッ!


地面にスライムがぶつかる。


「…………」


大地はスライムを見る。


スライムは再びこちらへ向かってくる。


「…………」


「待て」


ぷる。


「いや、待ってください」


ぷるぷる。


「…………」


「来るなぁぁぁぁ!」


大地は全力で逃げ出した。


⸻


「はぁ……はぁ……」


大地は木の陰に隠れて息を整えていた。


「…………」


スライムは見えない。


「……助かった」


大地はその場に座り込んだ。


そして。


「…………」


「俺、スライムから逃げたんだよな」


冷静に考える。


異世界転生。


女神。


特別なスキル。


そして――


「スライムに勝てない」


大地は頭を抱えた。


「…………」


魔物を倒せない。


ということは肉も素材も手に入らない。


素材を売って金を稼ぐこともできない。


「…………」


大地は自分の手を見る。


前世では、仕事ならできた。


パソコン。


資料作成。


数字の管理。


人とのやり取り。


だが、この世界にはパソコンもなければ会社もない。


「…………」


「俺、この世界で何ができるんだ?」


答えが出ない。


「…………」


腹が減る。


喉も渇く。


寝る場所もない。


金もない。


武器もない。


「…………」


「……詰んでないか?」


大地は空を見上げた。


「あのー…クソ女神様……?」


当然、返事はない。


「この人生ハードモードすぎない……?」

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