↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界温泉宿経営♨️ 〜「戦闘スキルをください!とお願いした女神がくれたのは、まさかの“銭湯スキル”でした〜  作者: 回胴めぐり


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/132

【第22話】目指すは新拠点


「……よし」


大地は冒険者ギルドの依頼掲示板を眺めながら頷いた。


掲示板には、採取や護衛、魔物討伐など、様々な依頼書が並んでいる。


その中でも、大地が目を止めたのは――。


「これにしよう」


指差したのは、鉱山周辺に出没する魔物の討伐依頼だった。


「……こちらですか?」


受付嬢が依頼書を確認する。


「はい。鉱山周辺なら、今後の活動拠点にする温泉地からも近いですし」


大地は依頼書を見ながら答える。


「魔物を倒しながらお金も稼げるなら、一石二鳥かなって」


「なるほど……」


受付嬢は依頼書から大地へ視線を移した。


そして、少し困ったような表情になる。


「ですが、ダイチさん」


「はい?」


「こちらの依頼は、Cランク指定になっています」


「……Cランク?」


大地が首を傾げる。


「俺、Eランクなんですけど……」


「はい」


受付嬢は頷いた。


「冒険者にはE、D、C、B、A、そして最上位のSというランクがあります」


「なるほど」


「基本的には、自分のランクに応じた依頼しか受けることができません」


受付嬢が説明を続ける。


「Eランクなら、薬草採取や簡単な雑用、街の周辺に出る弱い魔物の討伐などが中心になります」


「じゃあ、Cランクの依頼は……」


「本来であれば、ダイチさん一人では受けられません」


「ですよね」


大地は依頼書を見つめる。


しかし――。


受付嬢の視線が、隣に立つエレナへ向いた。


「今回は、エレナさんの帯同が認められます」


「え?」


大地がエレナを見る。


「私ですか?」


「はい」


受付嬢は頷いた。


「エレナさんはBランク冒険者です。それも、実力だけで言えばBランクの中でも上位と評価されています」


「……そんなに?」


大地が驚く。


「以前から気になってたけど、やっぱりエレナってかなり強いんだな」


「……いえ。私は、それほどでも……」


エレナが少し照れたように目を逸らす。


受付嬢は苦笑する。


「謙遜されなくても大丈夫ですよ。エレナさんの実力については、ギルドでも十分に把握しています」


「そうなんですか……」


「はい」


受付嬢は依頼書を指差した。


「上位ランクの冒険者が同行し、その責任のもとで行動する場合に限り、下位ランクの冒険者が本来のランクより上の依頼へ参加することが認められる場合があります」


「つまり……」


大地が確認する。


「エレナが一緒なら、俺もこのCランク依頼に参加できる?」


「その通りです」


「なるほど」


大地は隣のエレナを見る。


「助かったよ」


「いえ」


エレナは微笑んだ。


「私もダイチさんと一緒に活動できるなら嬉しいです」


「ただし」


受付嬢が釘を刺す。


「依頼中の危険については十分に注意してください。Cランク指定ということは、それだけ危険度も高いということです」


「分かりました」


大地は真剣な表情で頷いた。


「ちなみに、Cランクってどのくらいの強さなんですか?」


「一般的には、中級冒険者が複数人で対応するような魔物が対象になります」


「中級……」


「はい。特に鉱山周辺は、街の外より魔物の危険度が高くなります」


受付嬢が説明を続ける。


「温泉地周辺から山間部へ向かう道中に出る魔物も、今回の依頼対象として討伐して構いません」


「それなら、移動しながら魔物を討伐して、素材も集められる」


「はい」


「依頼報酬と素材の売却。両方で稼げるなら、効率もよさそうだ」


「ただし、最近は魔物の目撃数が増えているという報告もあります」


「……魔物が増えている?」


「ええ」


「原因は分かっていないんですか?」


「今のところは」


受付嬢は首を横に振った。


「そのため、別途調査依頼も出ています。もし現地で何か異常を発見された場合は、報告をお願いします」


「分かりました」


大地は依頼書を受け取った。


「では、今回の依頼については、エレナさんの帯同という形で登録しておきますね」


「お願いします」


「お気をつけて」


「ありがとうございます」


二人は冒険者ギルドを後にした。


◇


夕食は露店での食べ歩きで済ませ、宿へ戻る。


部屋に戻った大地は、ベッドに腰掛けながら今日一日の出来事を振り返っていた。


市場調査。


調味料の購入。


大工道具。


調理器具。


そして、冒険者ギルドで受けた依頼。


「……なんだか、一気に話が進んだな」


「そうですね」


エレナも向かいの椅子に腰掛ける。


「ですが、これからが本番です」


「だな」


大地は頷いた。


「そういえば……」


ふと思い出したように、大地が口を開く。


「エレナに話しておきたいことがある」


「何でしょう?」


「俺のスキルについて」


「はい」


「実は、温泉関係以外にもスキルがあるんだ」


「そうなのですか?」


「うん」


大地は少しだけ言葉を選ぶ。


「【鑑定】と【アイテムボックス】だ」


「……!」


エレナが目を見開いた。


「鑑定だけじゃなく、アイテムボックスまで? 女神様の加護と伝えられる希少なスキルですよ!?」


「さっき使えることが分かったんだ」


大地はテーブルの上に置かれていた水差しを手に取る。


「試してみる」


意識を集中させる。


「アイテムボックス」


水差しが、ふっと消えた。


「……!」


エレナが驚く。


「本当に消えました……」


「収納できたみたいだ」


「取り出せるのですか?」


「たぶん」


大地が再び意識を集中させる。


「出てこい」


次の瞬間。


水差しが大地の手元に現れた。


「……すごい……初めて見ました……」


エレナが目を輝かせる。


「これなら野営道具を持ち歩く必要がありませんね」


「そうなんだよ」


「とても便利です」


「だろ?」


大地も嬉しそうに笑う。


「それから、鑑定もある」


「鑑定……」


「例えば、これ」


大地は今日購入した調味料の瓶を手に取る。


「鑑定」


視界に情報が浮かぶ。


『発酵調味液』


『豆・穀物・塩を発酵させて作られた調味料』


『料理に使用すると旨味と甘味を加える』


「ちゃんと出た」


「魔物の素材にも使えそうですね」


「そう」


大地は頷いた。


「薬草の判別にも使えるし、素材の価値を確認するのにも役立ちそうだ」


「冒険者として活動するなら、とても有用なスキルですね」


「これなら、明日からの依頼でも役に立つ」


「はい」


エレナが微笑む。


「教えてくださってありがとうございます」


「これから一緒に行動するからな」


大地は笑った。


「隠し事は少ないほうがいい」


「……嬉しいです」


エレナが立ち上がる。


そして、そのまま大地の隣に腰を下ろした。


「では、明日から温泉地を拠点にするのですね」


「うん」


大地は頷いた。


「鉱山まで毎日クレーベルから通うのは効率が悪いからな」


「それに……」


エレナが少しだけ表情を曇らせる。


「刺客のこともあります」


「そうだな」


大地も真剣な顔になる。


「前に襲ってきた連中が、また来る可能性はある」


「はい」


「街中にいるから安全とは限らないしな」


大地は少し考えてから続けた。


「だったら、温泉地を拠点にしてしまおう」


「温泉の近くなら、ダイチさんのスキルも最大限に活用できますね」


「それも理由の一つだ」


「………」


「……俺が必ず守るよ」


「……はい」


エレナが微笑む。


「では、明日から温泉地で生活しながら依頼をこなす、と」


「そういうこと」


「分かりました」


二人は頷き合った。


「明日から温泉地を拠点にして、依頼をこなしながらお金を貯める」


「はい」


「その間に土地のことも調べる」


「建築に必要な材料もですね」


「うん」


二人は、これから必要になるものを一つずつ確認していった。


「焦っても仕方ない」


大地は最後にそう言って笑った。


「少しずつ進めよう」


「はい」


大地はエレナの頭にそっと手を置いた。


エレナが顔を上げる。


「エレナ」


「はい」


「明日からも、ずっと一緒だな」


「はい」


二人の距離が自然と近づいていく。


「温泉地で二人で生活するんだ」


「……少し楽しみです」


「俺も」


エレナが微笑む。


二人は肩を寄せ合った。


明日から始まる新しい生活。


不安もある。


危険もある。


それでも――。


今は、この時間が心地よかった。


◇


翌朝。


まだ空は薄暗い。


クレーベルの街も、普段なら眠りについている時間だ。


しかし――。


「……おお」


大地は市場を歩きながら声を漏らした。


時刻は午前五時頃。


荷車を引く商人。


朝採れの野菜を並べる農家。


焼き立てのパンを運ぶ店員。


魚や肉を扱う商人。


まだ早朝だというのに、市場には少しずつ人が集まり始めていた。


「……眠い」


「昨日は少し夜更かししてしまいましたね」


「誰のせいだよ」


「私でしょうか?」


「……俺です」


「ふふっ」


大地は欠伸を噛み殺す。


「まあ、早起きしたおかげで、普段とは違う市場が見られたけどな」


「そうですね」


二人は市場を歩きながら、今日必要になる野営道具を探していく。


「まずはテント」


「こちらですね」


「毛布も必要だな」


「夜は冷える可能性がありますから、厚手のものがいいでしょう」


「ランタン」


「水を入れる容器も」


「保存食も多めに買っておこう」


「それと、薪をまとめておける袋もあると便利かもしれません」


「確かに」


必要なものを一つずつ揃えていく。


「思ったより買うもの多いな」


「ですが、アイテムボックスがあるので問題ありませんね」


「そうなんだよ」


大地は笑った。


「これ、本当に便利だ」


「羨ましいです」


「じゃあ、荷物は全部俺が持つよ」


「お願いします」


購入した荷物を、次々とアイテムボックスへ収納していく。


「これで準備完了」


「はい」


「じゃあ――」


大地は荷物を背負う代わりに、空いた両手を広げた。


「出発だ」

お読みいただきありがとうございます!

励みになりますので、ブックマークやご評価・レビューよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。