【リゼside】紅影の熱情
『大地の湯宿』に帰ってきてから、数日が経過した。
セリーナとの一ヶ月にわたる旅を終え、大地はようやく日常を取り戻しつつあった。
旅館の経営は順調で、街の開発も少しずつ進んでいる。従業員たちもそれぞれの仕事に慣れ、大地が一日中付きっきりで指示を出す必要もなくなっていた。
そのため、最近では空いた時間を使って、新たな取り組みを始めていた。
それは――戦闘技術の習得である。
身体能力には自信がある。
温泉の効能による強化もあり、力や速さだけなら並の冒険者を大きく上回っているだろう。
しかし、先日のダンジョンの一件で痛感した。危険な目に合わせたくなかった、エレナやリゼを巻き込んでしまった。
どれだけ身体能力が高くても、それだけでは対処できない相手がいる。
そこで、大地はリゼに戦闘技術を教えてもらうことにしたのだった。
元Aランク冒険者であり、『紅影のリゼ』の異名を持つ彼女なら、師匠として申し分ない。
そして今日も、二人は旅館から少し離れた森の広場に来ていた。
「……よし。頼む、リゼ」
「……ん」
短く返事をしたリゼが、静かに構えた。
大地もそれに倣い、両手を上げて腰を落とす。
「いくぞ!」
地面を蹴り、一気に距離を詰めた。
身体能力を生かした踏み込みは速い。普通の人間なら、反応することすら難しいだろう。
大地はその勢いのまま、リゼの顔面を狙って拳を繰り出した。
だが――。
「……っ!?」
拳が空を切った。
リゼの身体が、ほんのわずかに横へずれていた。
大地が目で追うよりも早く、彼女の拳が脇腹に軽く触れる。
「ぐっ……!」
痛みはほとんどない。
しかし、攻撃を受けたという事実に変わりはなかった。
「まだまだ!」
大地は体勢を立て直し、今度は左拳を繰り出す。
それも、あっさりとかわされた。
続けざまに放った右の拳も、蹴りも、すべて届かない。
反対に、リゼの攻撃は面白いほど正確に大地へ当たった。
腹部に一発。
肩に一発。
最後は足を払われ、気がつけば大地は地面に尻餅をついていた。
「……参った」
「……ん」
リゼは差し出した手で大地を引き起こした。
その呼吸はほとんど乱れていない。
一方の大地は、額から汗を流しながら大きく息を吐いた。
「……おかしいだろ」
「……何が?」
「いや、俺も相当速く動いてるはずなんだけどな。リゼには一度も触れられないし、攻撃は全部当たるし……」
リゼは大地を見つめた。
「……動きが単純?」
「動きが単純?」
「……次に何をするか、わかる」
そう言って、リゼは大地の構えを指さした。
「……肩」
「肩?」
「拳を出す前に動く」
リゼは自分の肩を軽く動かしてみせた。
「……足も。踏み込みが大きすぎる。重心が前に流れてる」
「なるほど……」
言われてみれば、思い当たる節があった。
大地は相手を倒すことばかり考え、どう攻撃するか、どうすれば一撃を当てられるかという点に意識が偏っていた。
相手がどう動くかを考え、その動きを利用するという発想はほとんどなかった。
「つまり、俺は動きに無駄が多いってことか」
「……そう」
リゼは淡々と頷いた。
「速い。力もある。でも、技術がない」
「……容赦ないな」
「……魔物相手なら問題ないけど、熟練者相手には通用しない」
大地は思わず苦笑した。
だが、落ち込むつもりはなかった。
自分の弱点がわかったのなら、あとは改善すればいい。今度は愛する人たちを危険に晒さないように。
「じゃあ、どうすればいい?」
リゼは少し考えたあと、大地の前に立った。
「……基本から」
「基本?」
「……構え。足の運び。重心。全部」
「よし。頼む!」
大地が気合を入れると、リゼは小さく頷いた。
まずは足の位置からだった。
「……右足、半歩後ろ」
大地が足を動かす。
「……違う」
リゼは大地の横に立ち、足先の向きを直した。
「……膝、力を抜いて」
続いて、腰に手を添えて重心を調整する。
「……ここ。前に出すぎ」
「こうか?」
「……もう少し後ろ」
リゼは大地の身体に直接触れながら、少しずつ姿勢を修正していった。
腰の位置を整え、肩の力を抜かせ、拳を構える角度を調整する。
「……腕だけで振らない」
「うん」
「……足から。腰を使う」
リゼがゆっくりと動きを実演する。
小さな踏み込みから、腰を回し、拳を前へと送り出す。
その動作は驚くほど滑らかだった。
派手な動きではない。
それなのに、どこにも無駄がない。
「……すげえな」
大地が感心していると、リゼはわずかに首を傾げた。
「……やって」
「ああ」
大地は見よう見まねで同じ動きを繰り返した。
最初はぎこちなかったものの、何度か試すうちに、少しずつ感覚がつかめてきた。
「おっ、今のはいい感じじゃないか?」
「……まだ」
「厳しいなぁ」
そう言いながらも、大地の口元には笑みが浮かんでいた。
リゼの教え方は簡潔だが、的確だった。
余計な説明はしない。
必要なときに必要な部分だけを直し、できるまで繰り返させる。
それがかえって、大地にはわかりやすかった。
しばらくして、今度は身体の動きを確認するため、リゼが背後に回った。
「……肩、上がってる」
「え? ああ、悪い」
リゼの手が大地の肩に触れる。
ゆっくりと力を抜かせ、そのまま腕の位置を整えた。
近い。
普段から一緒に過ごしているとはいえ、こうして身体に直接触れながら指導を受ける機会は、今までほとんどなかった。
大地は少しだけ照れくささを覚えたものの、今は訓練に集中することにした。
「……そう。そのまま」
リゼは大地の腕を支え、正しい角度へと導く。
そして――。
「……すん」
「ん?」
背後から、小さな音が聞こえた。
大地が振り返ろうとすると、リゼは何事もなかったかのように手を離した。
「……何でもない」
「そうか?」
大地は不思議そうに首を傾げたが、深くは気にしなかった。
しかし、再び構えようとしたところで、リゼが大地の背中へ顔を寄せた。
「……すんすん」
「……リゼ?」
「……ダイチの匂い」
「え? ああ、汗臭いだろ。ずっと動いてるからな」
大地は苦笑し、額の汗を腕で拭った。
訓練を始めてから、すでにかなりの時間が経過している。
身体は熱を帯び、服にも汗が染み込んでいた。
普段よりも強くなった汗の匂いが、すぐ近くにいるリゼにも伝わっているのだろう。
だが、リゼは離れなかった。
一ヶ月。
ダイチが旅に出てから、リゼにとっては長い時間だった。
帰ってきたことは嬉しかった。
顔を見られたことも、一緒に食事をしたことも、以前と変わらず声を聞けたことも。
それだけで十分だと思っていた。
けれど、こうして二人きりで過ごしていると、胸の奥に押し込めていた気持ちが、少しずつ膨らんでいく。
目の前にいる。
手を伸ばせば触れられる。
それなのに、どうしようもなく恋しかった。
「……ダイチ」
「ん?」
リゼは返事をせず、大地の服をつかんだ。
その指先に、きゅっと力がこもる。
「……リゼ?」
大地が顔を向けた瞬間、リゼは彼の胸元に飛び込んだ。
「うおっ!?」
不意を突かれた大地は、支えきれずに後ろへ倒れ込んだ。
草の上に背中が沈む。
その上に覆いかぶさったリゼは、じっと大地の顔を見つめていた。
いつもと変わらない、静かな瞳。
けれど、その視線には、普段は決して表に出さない熱が宿っていた。
「……会いたかった」
小さな声だった。
それだけ言うと、リゼは大地の返事を待たずに顔を近づけた。
唇が重なる。
突然のキスに大地は目を見開いたが、すぐに彼女の気持ちを理解した。
リゼの腕が、大地の身体を抱きしめる。
離れた唇が、もう一度重なった。
今度は大地も、そっと彼女を抱き寄せた。
「……リゼ」
彼女の髪を撫でる。
リゼは答えず、大地の胸元に顔を埋めた。
そして、もう一度その匂いを確かめるように、小さく息を吸った。
「……好き」
ぽつりとこぼれた言葉。
それ以上、リゼは何も言わなかった。
けれど、その身体が伝えてくる気持ちは十分すぎるほど伝わってきた。
大地は、彼女を抱きしめる腕に少しだけ力を込めた。
「……ごめんな。一ヶ月も待たせて」
リゼはゆっくりと顔を上げた。
「……ううん」
そして、大地の頬にそっと触れる。
「……帰ってきたから、いい」
その言葉に、大地の胸が熱くなった。
自分が旅に出ている間、リゼがどんな気持ちで過ごしていたのか。
すべてを知ることはできない。
それでも、今こうして抱きしめている彼女の気持ちだけは、きちんと受け止めたかった。
「……ありがとう、リゼ」
大地は彼女の額に口づけた。
リゼは少しだけ目を伏せ、それから自分のほうから唇を重ねた。
今度は、大地も彼女を求めるように抱きしめ返した。
一ヶ月分の寂しさを埋めるように、二人は何度も口づけを交わした。
次第に口づけは激しさを増し、リゼは上気し頬を染める。久しぶりの感覚に少し照れているようだ。
「……んっ…ちゅっ…んはっ…ぢゅ…ぁん」
唾液交換を繰り返していると、表情からは気恥ずかしさが薄れ、淫靡な光を瞳に浮かべる。
「……ダイチ…ここ…匂い嗅がせて?」
リゼは唇から糸を引きながら、大地の硬く屹立した下腹部を衣服の上から摩る。
「……ああ…綺麗にしてくれるのか?」
「……任せて…」
大地の衣服を勢いよく下ろして脱がせると、硬く屹立したものがバネのように飛び出す。
「……すんすん………はぁ…いぃにおい…」
瞳を潤ませて、恍惚の表情を浮かべる。鼻と唇を近づけてると、荒い呼吸が当たり、より硬く雄々しく成長してゆく。
「……久しぶりの匂い…これ…好き」
ふーっふーっと発情した雌猫のような呼吸をしながら、生温かい舌先を肉棒の頭頂部に走らせる。
ちろちろと舐め取り、頭頂部の入口付近をこじ開けるように舌先で遊ぶと、淫靡な汁が溢れ出す。
丁寧に舐め取るも、奥からどんどんと溢れ出し、溶けたアイスのように滴っていく。溢さないように筋を舌で舐め上げて、上目遣いで反応を確かめてくる。
大地が刺激に腰を浮かせると、嬉しそうな表情を浮かべ、一気に口で咥え込み、大地の太腿の裏を掴んで、頭を振り始める。
「……んっ…おぉひぃ…んぢゅっ…んくっ」
「…リゼの中…あったかくて気持ちいいよ」
頭を振り乱しながら、彼女はシャツのボタンを器用に外し、大きな双丘を露わにさせた。
久しぶりに見る瑞々しく実った大きな果実は雄の欲望を肥大化させる。
リゼは大地の視線に安心感を覚え、口一杯に含んでいた肉棒を自身の双丘で包み込む。
どろどろに溶けたアイスのような淫猥な肉棒は双丘の谷間の汗と涎が混ざり合いながら、潤滑油の役割を果たす。
「……んっ…んっ…ダイチ…これ好き?」
柔肌に挟まれた屹立したものが谷間から淫らに出し入れされると、次第に大地の腰は本能的に動き出す。
「…あぁ…くっ…うっ…最高だよ」
リゼの肩を掴み、双丘の動きに合わせて腰を一心不乱に打ち付ける。彼女は双丘を両手で挟んで圧力をかけ、舌先を肉棒に走らせる。
「…ん…ちゅる…ダイチのどんどん硬くなる…破裂しそ……んちゅ…ーーーーーーッ!」
「ーーーーうくっ!!…あくっ…はぁ…はぁ」
リゼの顔と胸に白濁とした印を叩きつけ、雄の匂いが辺りを埋め尽くす。びくんびくんと痙攣しながら暴れる大地を双丘で挟み込み、最後の一滴まで絞り出す。
「……ダイチかわいい…すごい飛んだ…んちゅ…んくっ…んはぁ」
リゼは勢いに驚いたものの、飛び散った精を指で掬い取り、淫魔のように匂いを嗅いでから舐め取っていく。
「……ぁん…んくっ…ぢゅっ…んっ…んはぁ」
汚れを浄化するように、裏筋、雁裏、頭頂部と肉棒を献身的に舌で洗われると、下腹部は力を取り戻し始める。
「………んはぁっ…しゅごい…もぉかちかち…」
リゼは大地に跨り、秘部の花弁を押し当てて、媚びるように腰を振っている。ぬちゃぬちゃと淫靡な水音が聞こえてくる。
「……んはっ…ぁん…んっ…もぉいぃよね…?」
我慢の限界がきたのか、硬く屹立した肉棒を秘部に充てがい、体重を一気に落とす。
「……んくっ…ーーーーーーーっぁあん!!」
身体を逸せて、痙攣を繰り返したと思ったら、ゆっくりと腰をグラインドさせ始める。精によって穢れた果実は上下に揺れ、雄を誘惑してくる。
「……んっ…ぁぐ…ぁん…おなか…いっぱいに…」
大地はリゼの両手を絡み合わせ、激しく杭打ちのように双臀を打ち込む彼女を見上げる。
久しぶりの快楽の虜になっているのか、まるで妖艶に舞を舞っているようだ。
ーー料理中に見せる、普段のリゼ。
ーー戦闘中に見せる、かっこいいリゼ。
ーー情事に見せる、快楽に溺れるリゼ。
ーーその全てが愛おしい。
恥肉と恥肉がぶつかり合い、破裂音のようなものを奏でながら、大地は精が上がってくる気配を全身で感じる。
「…ダ、ダイチ!…ダイチっ…やぁんっ!」
中距離のラストパートと言わんばかりに振り絞った力で大地はリゼに合わせて、腰を動かし始める。
「……あぁんっ!…だ…めっ!…イっくっ!!」
リゼは急な刺激に大地に胸を潰して寄りかかるも腰は止まらない。彼女の双臀を両手で押さえ、脳天まで届かせるつもりで花弁の奥の秘められた部屋に精を吐き出した。
「「ーーーーーーーーーーーーーーッ!!」」
汗や体液がどろどろ混じり合い、息をあげる二人は見つめ合い、自然と唇を重ねる。
「ただいま…リゼ…」
「………はぁ…はぁ……おかえり…ダイチ」
やがてリゼは、大地の胸元に頬を寄せたまま、静かに目を閉じた。
「……もう少し」
「……ああ」
大地はそれ以上何も聞かず、彼女の背中を撫で続けた。
森の中には、二人以外に誰もいない。
木々の間を抜ける風の音だけが、静かに響いていた。
その日、戦闘技術の訓練は途中で切り上げることになった。
大地はリゼを抱きしめながら、彼女の気持ちに応えるように優しく口づけた。
そして二人は、互いの愛情を確かめ合うように、誰もいない森の中でしばらく寄り添っていた。
それから、どれほどの時間が経っただろうか。
ようやく落ち着いた頃には、森の広場にも穏やかな午後の光が差し込んでいた。
大地は草の上に座り、隣にいるリゼの髪をそっと撫でた。
リゼは何も言わず、大地の腕に身体を預けている。
「……リゼ。明日も訓練、付き合ってくれるか?」
「……ん」
「今度こそ、一発くらい当てたいんだけどな」
リゼは顔を上げ、大地を見た。
「……まだ無理」
「即答!?」
思わず声を上げる大地。
リゼはほんのわずかに目を細めた。
笑ったのかもしれない。
「……練習すれば、できる」
「ああ。頑張るよ」
大地がそう答えると、リゼは再び彼の腕に頬を寄せた。
「……明日も、二人で」
「もちろん」
その返事を聞くと、リゼは満足したように目を閉じた。
戦闘技術を身につけるには、まだまだ時間がかかりそうだ。
けれど、大地には頼れる師匠がいる。
そして、その師匠は――。
「……ダイチ」
「ん?」
「……愛してる」
「ああ。俺もだよ」
立ち上がった大地の手を、リゼがそっと握る。
その手を握り返しながら、大地は旅館へと続く道を歩き始めた。
今度は、彼女を長く待たせないように。
そう心に決めながら。




