裏切りの花
待ち合わせは花蘇芳の木のところだった。
時間ぎりぎりになってしまったので足早に向かっていた。
近くまできて思わず足が止まった。
彼はもうすでに来ていた。
それはいい。
だけど彼は一人ではなかった。
いやそれはまだいい。
問題は二人の状態だ。
彼が女性と抱き合っているようだった。
こちらからでは彼の体で顔は見えないが、長い髪と柔らかなスカートに包まれた足が見える。
まさかこんな裏切りを目にすることになるなんて。
怒鳴り込みにいくべきか、それとも立ち去ってしまうべきか。
相反する気持ちでとっさに体が動かない。
そうしているうちに二人は体を離した。
ぺこぺこと頭を下げて女性は去っていく。
うん? どういうことかしら?
心の中で首を傾げていたら振り向いた彼と目が合った。
彼の顔に微笑みが浮かぶ。
どう見ても浮気を見られた様子ではない。
心の中で唸っている間に彼が私のもとまで来た。
もやもやするより訊いてしまったほうが早い。
「今の女性は?」
「女性?」
「今、貴方に頭を下げて立ち去っていった女性がいたでしょ?」
「あ、見てたんだ」
やはりまったく悪びれた様子はない。
「ええ」
「風で彼女の髪が僕のシャツのボタンに引っ掛かっちゃったんだ」
「そうなの」
それなら先程の彼女の態度も納得できる。
「行こうか」
差し出された手を握る。
「ええ」
晴れやかな気持ちで頷いた。
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