表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小さな花の物語  作者: 燈華


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

96/129

あなたに夢中と至福のときの花

市内のあちこちに藤が植えられており、市外からも藤を見に訪れるくらい有名だ。

藤の名所と呼ばれるところは他にあって藤棚の下にベンチが置いてあるだけのここの藤はあまり知られていない。

でも私はここの藤が好きだった。


藤の下に置かれたベンチに座って本を開いた。

まだ待ち合わせには時間がある。

少しここで時間調整をしてから待ち合わせ場所に向かうことにしたのだ。


気づけば本に没頭していた。

だからつい時間が経つのを忘れた。


ぽんと軽く肩を叩かれると同時に声をかけられて顔を上げる。

そこには待ち合わせをしていた彼がいた。


「あら?」


目を瞬く。

何でここに?


時計を見る。

約束の時間を過ぎていた。


「ごめんなさい。読書に夢中になっていたわ」

「だと思って迎えに来たよ」


彼は苦笑しているだけで怒っている様子はなかった。


「ごめんなさい。ありがとう」

「どういたしまして」


澄まして応じた彼が微笑をこぼす。


「至福のとき、って感じだったね」


あら、そんな感じだったのね。

夢中になっていたから気づかなかった。


「この本が面白くてつい夢中になってしまったの」

「僕にもそんなふうに夢中になってもらいたいものだ」


目を瞬かせた後で、ふわりと微笑(わら)う。


「あら知らなかった? 私はもうとっくにあなたに夢中よ?」

「なんて説得力のない言葉だ」

「本当よ?」

「そういうことにしておくよ。ありがとう」


信じてもらえていない。

これは普段の行いのせい、かもしれない。

仕方ない。

後で挽回できるように頑張ることにしよう。


本を仕舞う。


「ほら行こう?」


差し出された手に手を重ねれば優しく握って軽く引っ張られた。

立ち上がる。


そのまま手を繋いで歩き出した。


読んでいただき、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ