神託の花
黄色い丸い花を咲かせたたんぽぽが一面に咲いていた。
私はその中をゆっくりと歩いていく。
たんぽぽの花を踏まないように気をつけながら。
ふわふわと綿毛が飛んでいく。
その光景も楽しい。
鼻歌を歌いながら歩いていく。
童心に帰ったようで楽しい。
声をかけられて立ち止まり振り向く。
彼が手に持っているものを見て思わず微笑う。
たんぽぽの花冠。
ぽすんと頭に被せられた。
「うん、似合う」
彼は満足そうに微笑う。
「ありがとう」
礼を言ってまた歩き出す。
ところどころで立ち止まって花を摘みながら。
気ままに歩いては止まるを繰り返す。
そんな私の後ろを彼は文句も言わずについてくる。
立ち止まってまた一本たんぽぽを摘んだ私の髪をそよりと風が揺らす。
目を閉じて風を感じてみた。
そよそよと頬を撫でていく風が気持ちいい。
しばらくそのまま風を感じていた。
満足してそっと目を開けると彼が神妙そうな顔で立ち止まって私を見ていた。
何かあったのだろうか?
首を傾げる。
それでも彼は神妙そうな顔のまま黙って私を見つめたままだ。
「どうしたの?」
声をかければはっと我に返ったようだ。
「本当にどうしたの?」
先程までは普通だったのに私が目を閉じている間に何があったのだろう?
彼は視線を逸らしてぼそぼそと答える。
「いや、神託を受ける巫女のようだったから」
なにそれ、と微笑ってしまう。
そんな神秘的なことは何もない。
「何も受け取ってはいないよ。風を感じていたの」
「そうか」
「うん」
彼はそれ以上は言及しなかった。
また歩き出す。
彼をお供にした散歩はまだ続く。
読んでいただき、ありがとうございました。
先に男性視点を思いついてしまったので、そちらを本日19時に短編でアップします。
よろしければそちらもお楽しみください。




