純粋の花
「これを、君に」
差し出されたのは何かの花を模した髪飾りだ。
白い花が可愛らしい。
「まあ可愛らしい」
「気に入ってくれたか?」
「ええ、とても。これは何の花?」
「この花はオーニソガラムというんだ。結婚式とかに使われる花だ」
「結婚式……」
思わず動きが止まってしまった。
これをつけて結婚式に参列してほしいということだろうか?
私以外の、誰かとの。
胸がつきんと痛む。
結局私は彼の好きな人にはなれなかった。
ただの幼馴染み。
もしかしたら妹扱いかも。
彼がわずかに顔に緊張を乗せた。
「本当は指輪を差し出すべきなんだろうが、結婚してくれないか?」
「え?」
自分の耳にした言葉が信じられなくて大きく目を見開いた。
「驚かせて悪いが、本気だ」
「でも、他に結婚したい人がいたんじゃあ?」
「そんな噂もされていたな」
何人もが彼女と歩いている彼を目撃していた。
実は、私も見たことがある。
とても、お似合いの二人だった。
だからこそ諦めなくちゃと思っていた。
なかなか諦めることはできなかったけど。
それなのに、だ。
「違うの?」
「彼女は大学時代の友人だ」
「それだけ?」
「……先日告白された」
やっぱり、彼女は彼のことが好きだった。
そんなこと、彼女のあの笑顔を見ればわかることだった。
「だけど、断った」
そうでなければ今このようなことを言い出したりはしないだろう。
だけど。
「心を揺さぶられたりは?」
「……多少は。だが、」
彼が私の目を真っ直ぐに見つめる。
「純粋に慕ってくれる瞳を裏切れなかった」
「気づいて、いたの?」
「ああ。彼女に告白された時も君の目を思い出した。その時に自分の心も定まったんだ」
「同情とか、親愛とかじゃないのね?」
「違う。本気で君と結婚したいと思っている。嫌か?」
そんなの、ずっと昔から答えは決まっている。
「私はずっと昔から貴方のことが好き。だからもちろん、お受けします」
彼は力が抜けたようにゆるゆると微笑む。
どうやら相当緊張していたようだ。
「よかった。断られたらどうしようかと。つけてもいいか?」
「うん、もちろん」
彼が髪飾りをそっと髪につけてくれる。
「ありがとう」
手元に鏡がないのが残念だ。
だけど。
「うん、よく似合う」
彼のその言葉と笑顔で今の私には満足だった。
また一つ、私の宝物が増えた。
読んでいただき、ありがとうございました。




