誠実の花3
彼にはいろいろ噂がある。
派手に遊び歩いているとか、女をとっかえひっかえしているとか。
飽きれば簡単に捨てるだとか。
とにかく女性関係の噂が絶えない。
彼は、私の恋人だ。
複数いる恋人の一人、というわけではない。
唯一の恋人だ。
友人にはそんな男はやめろと言われている。
どうせ唯一と言っていても何股もかけているだろうし、本命は別にいるかもしれないと。
そうかもしれないし、そうでないかもしれない。
彼は私が唯一の恋人だと言ってくれている。
信じてほしい、とも。
だから私は信じることにした。
きっと惚れた弱味なのだろう。
今日は私の誕生日だ。
どうせ彼は来ない。
「ただいま」
一人暮らしの部屋に私の声だけが響く。
返事はない。
やっぱり……。
わかっていたのに落胆するのは心のどこかで期待していたからだろう。
今日くらいは、もしかしたら、と。
少しの誠実さを見せてくれるのでは、と。
でもそんなことはなかった。
こういう時はやはり心が揺れてしまう。
彼にとって私は何なのだろう?
誕生日も祝ってもらえないなんて。
はぁと溜め息をついて明かりをつけた。
視界に入ったのはテーブルだった。
小さく息を呑む。
テーブルの上にはリボンで縛っただけの花と彼直筆のカードが置かれていた。
黄色の花のムルチコーレ。
私が前に好きだと話していた花。
それを覚えていて誕生日に贈ってくれた。
それこそが彼の誠実の証だった。
読んでいただき、ありがとうございました。




