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小さな花の物語  作者: 燈華


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謙遜の花

「いえ、そんな大したことでは……」


両手を軽く振って否定する。

それは私にとってはいつものことだった。

そういつものことだったのに。


「謙遜も過ぎれば不愉快だ」


顔をしかめて吐き捨てるように言われた。

きゅっと胸の奥が縮こまる。

震える手を握りしめて頭を下げる。


「申し訳」

「謝るな」


唇を噛む。

顔は上げられなかった。


「もういい」


溜め息と共に告げられる。

それに何も言えなかった。


「少し休憩にしよう」


ばらばらと返事が返り、彼は足早に部屋から出ていった。


「気にしないでいいよ」などの同僚の言葉に礼を返して私も部屋を出た。

廊下を歩いて裏口から外に出る。


休憩のための場として整備されている場所の更に奥にあるあまり人の来ないベンチに座る。

近くに山吹の植えられたここは私のお気に入りの場所だった。


今の季節は黄色い可愛らしい花が咲いている。

でも可愛らしい花を見ても私の心は晴れなかった。


小さく溜め息をつく。


時折こういうことはあった。

私の何かが気に障り、失望させてしまう。

何が悪いのわからない。


足音が聞こえてきて顔を上げる。

先程厳しい声を投げつけた彼が気まずそうな顔でこちらに歩いてきていた。


思わず立ち上がる。

彼は一定の距離を置いて立ち止まった。


「どうしましたか?」

「いや、泣いているかと……」

「泣いていません」


もうそんなことくらいでは泣くことはなくなった。


「さっきは悪かった。言い方がきつかった」

「あ、いえ。大丈夫です」


普段通りの声で告げた私の顔をじっと見た彼は眉根を寄せた。

また何か不愉快にさせてしまったようだ。


「さっきのは、」

「はい」

「もっと自分を認めたらいい、と言いたかったんだ」

「え?」


まさかそんなふうに言ってくれているとは思わなかった。

彼はバツが悪そうに視線を逸らした。


「言い方が悪かったのは認めるが、自分なんて大したことはないとばかりだったからつい」

「いえ本当のことですから」

「それだ」

「えっと、どれですか?」


彼は溜め息をつく。


「本当に自己評価が低いんだな」

「そうですか?」

「ああ。自分に厳しくするのはいいが、もう少し認めてやったらどうだ? すぐには無理だというなら、そうだな、他人が評価した時くらいは」


彼は本当に私のことを考えて助言してくれているのだろう。

こんなふうに親身になってくれた人は初めてだ。


胸の奥に何か温かいものがじんわりと広がる。

ふわりと微笑んだ。


「ありがとうございます。頑張ってみます」



読んでいただき、ありがとうございました。

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