晴れやかな魅力の花
トルソーにかけられたドレスを見てほぅっと息をついてしまう。
上半身はシンプルな形で、スカートは花びらを象った少しずつ色味の違う橙色の布が何枚も重ねられている。
繊細な色の変化がまさにラナンキュラスの花のようで。
人を惹き付ける晴れやかな魅力がある。
隣に立つ彼が私の様子に微笑む。
「君をイメージしたドレスなんだ」
「え、私?」
私はこんな華やかさは持ち合わせていない。
どこが私のイメージなのだろう?
「君はラナンキュラスの花にどんなイメージを持っている?」
「えっと、ころんとしたフォルムの可愛らしい華やかな花、かな」
え、待って。私、ぽっちゃりしてると思われてる?
それってかなりショックだ。
「ん? どうした?」
「わ、私、そんなにぽっちゃりしてないと思う」
「ぽっちゃりしているなんて思ってないが」
早とちりだったようだ。
「ならいいの」
「ころんとしたフォルムから連想したか?」
「いいでしょ、別に」
彼はそれ以上は追及しなかった。
「俺は繊細さと凛とした立ち姿の花だと思っている。何枚もの花びらが重なり合っていても揺るがない芯の強さがある」
彼が私を真っ直ぐに見る。
「それが俺の君のイメージだ」
「え?」
私自身は全くそんな人間だとは思わないけど。
彼にとってのイメージがそうであるなら、彼にとってはそれが正しい。
こと、ドレスのデザインならば特に。
「あの花を見る度に君みたいだと思っていた。いつかあの花をモチーフにしたドレスを作りたいとも」
「夢が、いえ目標が一つ達成できたのね」
「ああ。それであのドレスを君が着てくれたら夢が一つ叶う」
「うん?」
「あれは君のためにデザインしたドレスだ」
正直私が着たらドレスに負けると思っていたから想定していなかった。
彼は真摯な目で私を見据える。
「着てくれないか?」
「今?」
「着てくれるなら最高のスタッフをつけて完璧な仕上がりにしたい。駄目か?」
彼の声が不安に揺れる。
私はもう一度ドレスを見た。
美しいドレスだ。
一目見た時から惹かれていた。
だからこそ尻込みしてしまう。
「ドレスに負けちゃわない?」
「そんなことはない。絶対に似合う」
彼の目を見る。
その目に一片の迷いもない。
「わかった。着る」
ふわりと彼の表情が綻んだ。
「ありがとう。世界一美しい女性にしてやるから楽しみにしていろ」
それはさすがに言いすぎだと思う。
だけど。
「楽しみにしてるね」
私は心の高鳴りのまま笑顔で告げた。
読んでいただき、ありがとうございました。




