優美の花
その優美な曲線の美しいこと。
思わず触れたくなって堪える。
触れていいものではない。
その完璧なまでの優美さは孤高さえも貫くような神秘さがあった。
触れて汚してはならない。
そんな想いさえ抱かせる。
だが持ち主である彼はあっさりと言う。
「触れたければ触れればいい」
私は首を振った。
彼は首を傾げた。
「何故?」
「何か、触れれば汚してしまいそうで」
心底意味がわからないという顔だ。
「触れなければ使えないだろう?」
それはその通りだ。
だけど。
「勿体ないというか、畏れ多いというか」
彼の眉が寄る。
「物は使ってこそ真価を発揮する。こんなふうに」
彼はさっとスイートアリッサムの束を無造作に入れた。
その途端、器が活き活きとし出したように見えた。
「どうだ?」
「活き活きしているように見える」
「そうだろう」
彼は満足そうに頷く。
私は自分の浅はかさに落ち込む。
それに気づいた彼は慰めるようでもなく告げた。
「お前はたぶん、感受性が強いんだろうな」
「え……?」
「だから器にも神秘性などというものを感じる」
「そう、かしら?」
彼は頷いた。
でも、それならどうすればいいのだろう?
きっと私はこれからも完全な美を感じるものに神秘性を感じ、手を触れることでさえ畏れるだろう。
そう思ったところであっさりと彼が言う。
「ま、いいんじゃないか?」
「え?」
「使い方も感じ方も人それぞれだ。それは誰に咎められることでもない」
「それは、そうね」
すとんと肩から力が抜ける。
彼の言う通りだ。
使い方も感じ方も人それぞれだ。
それを咎める人がいたら相手のほうがおかしいのだ。
「ありがとう」
「どういたしまして」
彼が微笑って言うので、私も微笑ってしまった。
それからスイートアリッサムを活けた器のほうに視線を向ける。
彼のほうには視線を向けていない。
それでも彼が優しい眼差しで私を見守ってくれているのはしっかりと感じていた。
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