快活の花
目の前に広がるのは一面の菜の花畑。
キャンバスを一面黄色で塗ったようだ。
菜の花が集まるとまさかここまで圧巻の様相を見せるなんて思ってもいなかった。
「わぁー、すごい!」
思わずはしゃいだ声を上げてしまう。
彼は快活に笑った。
「そんなに喜んでもらえたなら連れてきた甲斐があったな」
「うん、連れてきてくれてありがとう!」
「どういたしまして」
彼はにやりと笑う。
「駆け込んだりするのはさすがに駄目だぞ」
さすがに中に走り込んだりはしない。
「そんなことしないよ。君だっておいしそうだなんて思っているんじゃないの?」
「……思ってない」
「今の間、怪しい」
「本当に思ってない。これだけ花が開いては美味しくないからな」
「そう? 食いしん坊の君ならそれでもむしゃむしゃって食べちゃうんじゃない?」
「……食べないよ」
「その間が怪しい」
「……何でもない」
そっと視線を逸らす彼の顔をのぞき込む。
「くそっ、可愛すぎる」
たぶん聞かせるつもりはなかったのだろうけど、私にはばっちり聞こえた。
感情のまま彼の胸に飛び込むようにして抱きつく。
「うわっ!」
声を上げながらしっかりと受け止めてくれる。
「な、何だよ? 危ないだろう」
「大好き!」
「は?」
「大好き!」
みるみるうちに彼の顔が赤くなる。
にんまりと笑っていると顔を赤くしたまま睨まれる。
「お前……夜は覚悟しておけよ?」
耳元で囁かれてあわあわと慌てる。
彼は声を上げて楽しそうに笑うが、決して離してくれなかった。
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