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小さな花の物語  作者: 燈華


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意外なことの花

意外なことに遭遇した時、どんな反応を取るかによって人間性ってわかるものなのかもしれない。


私は、固まって動けなかった。

彼の意外な姿を見てしまって。


彼とは会社の同僚だ。

全然親しくはない。

挨拶と仕事の話しかしたことはない。

向こうがこちらをきちんと認識しているかも怪しい。


彼はにこりとも笑わずに真面目だが淡々と仕事をこなしていてあまり周りとは関わらない。

クールなところが素敵だと一部の女子社員に騒がれている。

私は苦手だけど。


なのに、今の彼は別人のようだ。

いや、本当に別人かも。

世の中には同じ顔をした人間が三人はいるというし。

双子か三つ子か四つ子かもしれないし。

うん、きっとそうだろう。


だってーーあんな笑顔初めて見た。


ここは大規模なフリーマーケットの会場だ。

そこに私は客として訪れていた。

そして彼は売り手として参加していた。

彼と目が合った。


一瞬目を見開いたのがわかった。

どうやら他人ではなく本人らしい。

そしてどうやら私のことも同僚として認識はしていたようだ。


どうしよう? 立ち去るべきだよね。

どう考えても関わられたくはないだろう。


「いらっしゃいませ。よかったら見ていきませんか?」

「え、あ、はい」


言われてしまえば無視するわけにもいかないだろう。

彼のほうに歩いていく。


口止めでもされるのだろうか?

そんなことをしなくても誰かに話す気はない。言っても信じないだろうし。


並べられていたのはアクセサリーだった。


「可愛い……」


思わず呟けば彼は嬉しそうに微笑(わら)った。


「ゆっくり見ていってください」

「はい」


並べられているのはレジンやビーズを使って作ったアクセサリーのようだ。

どれも可愛い。


一つのバレッタに目が止まった。

それに気づいた彼が説明してくれる。


「みつまたの花をドライフラワーにしてレジンで固めてあるんですよ」

「へぇ」


ドライフラワーなのでくすんでいるけど黄色い小さな花がいくつも寄り添い合っていて可愛らしい。


「じゃあこれください」

「ありがとうございます」


お金を払い、丁寧に紙袋に入れられたバレッタを受けとる。


「ありがとうございました。機会があればまたどうぞ」

「はい」


会釈して離れた。

最後まで彼は口止めなんてしなかった。


彼への印象は百八十度変わった。

だからといって会社で馴れ馴れしくするつもりはない。

今まで通りに撤するつもりだ。


だけど、彼の笑顔を思い出したら、とくん、と胸の奥が小さく高鳴った気がした。

読んでいただき、ありがとうございました。

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