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小さな花の物語  作者: 燈華


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追憶の花3

花のついた茶の木を一枝一輪挿しに挿す。


茶の花を見つけるとつい手を伸ばしてしまう。

今日も無人スタンドで売っているのを見て買ってきてしまった。

まさかこんなところで、という思いもあったけど。


ローテーブルの上に飾り、ぼんやりと眺める。

心は過去へと彷徨っていく。


故郷は茶の栽培が盛んだった。

市内のあちこちには茶畑が広がっていた。

今でも目を閉じれば鮮やかに瞼裏に映し出される。


家の前にも茶畑が広がっていた。

お茶摘みの時期は私もアルバイトに行ったりしていた。

友人たちも同じだったからアルバイトの後はそのまま遊びに行ったりした。

楽しかった。

お茶摘みは大変だったけど、今思い出せばそれもまたいい思い出だ。


あの頃の思い出にはいつも茶畑がある。


初恋の彼にもらったのも茶の木の花だった。

だから茶の木の花は特別だった。

自宅の庭に一本だけ茶の木があるんだ、と彼は言っていた。

中学生だった私たちはそれ以上何もなかった。


あの時勇気を出して告白すれば関係を進められたのだろうか?

まあ今さら何を思っても過去は変わらないけど。


追憶はいつだって切なさを伴う。

あの茶畑は今はもうない。

実家もなくなってしまった。

故郷に帰ることももうない。

初恋の彼は別の女性と結婚した。


そして、私はーー


「それ、お茶の花、だっけ?」


部屋に入ってきた夫が訊く。

私も別の男性と結婚した。


「うん、そう。私の好きな花」

「故郷の思い出の花だっけ?」

「うん」

「初恋の彼にもらったものだっけ?」

「……うん」

「きっとその彼とのこと込みで思い出なんだろうね」


のほほんと微笑(わら)って彼が言う。


「嫌じゃないの?」


思いきって気になっていたことを訊く。


「今君が僕を好きでいてくれればそれでいい」

「うん、愛している!」


彼に抱きつく。

そんな私を彼は軽々と抱き留める。


「情熱的だなぁ」


そう言って彼はやっぱりのほほんと微笑(わら)うのだった。




読んでいただき、ありがとうございました。

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