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小さな花の物語  作者: 燈華


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守護の花

腕を組んで見下ろされる。

怯(ひる)みそうになるのを睨むように見ることで堪えた。


「勝手なことばかりすれば守りきれない」

「守護してくれだなんて頼んでない」


つんとそっぽを向く。

わかっている。

彼の庇護下にあるからこそ私は安穏と暮らせるのだ。


彼がはぁと溜め息をつく。

びくんと肩が跳ねた。

彼に見捨てられたら……。

ぎゅっと拳を握る。

それでも言った言葉を取り消さない。

きゅっと閉じた唇に力を込めた。


彼が動く気配がする。

呆れて部屋を出ていくのだろう。

ますますぎゅっと拳を握り、目を伏せる。


彼が目の前にしゃがむ。


「どうした? 何かあったのか?」


優しい声だった。

そろりと顔を上げて彼を見る。

彼の顔に怒りはなかった。

真摯に話を聞いてくれようとしている。


私は口を開きかけ、緩く首を振った。

そうでなくとも私の存在は彼の負担になっている。

これ以上の心配をかけるわけにはいかない。


「何もない。ごめんなさい。ちょっと衝動的に飛び出しちゃっただけ。反省してます」


彼に頭を下げる。

その頭にぽんと手が乗せられる。


「……まあ、一人になりたい時もあるだろう。その時は言ってほしい。飛び出していかれると心配になるから」

「……はい」


ぽんぽんと頭を撫でて彼はリビングを出ていった。

彼の足音が遠ざかるの待ってから顔を上げる。


棚の上に視線を向ける。

棚には小さな野紺菊の鉢植えがあった。

こっそりと抜け出して買ってきたもの。

それについて彼は何も言わなかった。

亡き母が好きだった花だ。


彼はもともと母の知り合いだ。

母一人子一人で慎ましく暮らしていたのに母が亡くなってしまい、途方に暮れていたところに手を差し伸べてくれたのが彼だった。

何の血縁もないのに保護者になってくれたのだ。


これ以上の迷惑をかけられない。

いい子でいよう。

ようやくそう決めることができた。

本当はもっと早くそう決めるべきだったのだ。


ぎゅっと拳を握って立ち上がった。




読んでいただき、ありがとうございました。

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