虚飾の花
はっきり言ってしまえば私はモテる。
でもそれは表面的な私を見てに過ぎない。
虚飾に満ちた私を愛されても空しい。
誰かあたしに気づいて。
愛するのならあたしを愛して。
心の中ではそう叫んでいる。
まるで安いメロドラマのようだ。
いやもうメロドラマも死語か。
自分で笑ってしまう。
でも今さら素のあたしを出して生きていくことなんてできない。
きっとこの先もこの虚飾を纏って生きていくのだろう。
ドラマのように「俺の前でだけは素のままでいろ。どんなお前でも受け入れてやる」などと言う男性が現れるはずもない。
そう、思っていたのに。
確かにそんな臭い台詞を言う男は現れなかった。
だけど、分厚い鎧の奥にあるあたしに気づいた男はいた。
虚飾にまみれた私だろうと、素のあたしだろうと彼は態度を変えることはなかった。
前にうっかり、あたしが出てしまったのだ。
それでも彼は気にしなかった。
「いつもの取り澄ました顔もいいが、そういうふうに素直なのもいいな」
そう屈託なく言っただけだった。
それからは彼といる時は取り繕うことはなくなった。
彼の前では素直なあたしでいられる。
「これやるよ」
そう言って彼がくれたのはオレンジ色の花の咲いた鉢植えだった。ちょっと変わった花で、翅を広げた蝶が何匹も止まっているようだった。
「何これ?」
「クロッサンドラって花らしい。なんかお前っぽいなって思って買ってきた」
「どこが?」
「んー、何となく。ちょっと変わっているがそこが可愛いとか」
「か、可愛い!?」
「何驚いてんだ。そんなことしょっちゅう言われてんだろ」
「綺麗とは言われても可愛いとは言われないかな。ってちょっと待って、その前に変わっているって言ったよね?」
「だって変わってはいるだろう?」
「初めて言われた」
「そっか。まあそうだろうな。でも、俺はそこが可愛いと思ってるんだぞ」
それは何とも複雑だ。
むっと唇を小さく尖らせると笑われた。
「ほら機嫌直せ」
「笑って言われてもね」
「それは悪かった」
そう言って彼は軽いキスを一つくれた。
キス一つで機嫌を直してしまうあたしも単純だ。
「仕方ないから大切にしてあげる」
鉢を抱き締めて言えば彼は嬉しそうに微笑んだ。
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