華やかな美しさの花
何故か唐突に先日見た光景が思い出された。
華やかな美人の顔が頭をよぎる。
つい口に出してしまう。
「私は彼女のような華やかな美しさを持ってないよ?」
それなのに何故私を彼が選んでくれたのかわからない。
先日、彼が彼女に告白されている場面をたまたま見た。
私はとっさに身を隠してしまった。
自分の恋人ではなくとも他人の告白現場に遭遇するのは気まずい。
それなのに自分の恋人へのだ。
身の置き所に困る。
気づくのが遅れたからばっちりと声が聞こえる場所だった。
彼は誤解なんて与えないくらいにきっぱりと断っていた。
それにほっとしたのも事実だ。
彼女は余程自分に自信があったのだろう。そんなふうに断られても食い下がっていた。
彼は心を揺らした様子もなくその度にきっぱりと断っていた。
何度も断られてからようやく彼女は諦めて立ち去っていった。
私は視線で気づかれないようにずっと植えられていたコルチカムの花を見ていた。
足音が離れていくのを聞いて視線を戻したら彼女が立ち去る後ろ姿が見えた。
彼は彼女がいなくなってから溜め息をついて歩き出した。
真っ直ぐに私の元に来たから彼は最初から気づいていたのだろう。
彼女はたぶん気づいていなかった。
気づかれていたら気まずかった。
気づけばそんなふうに思い返していた。
彼はすぐに誰のことを言っているのか気づいたようだ。
「まあ、確かに彼女は華やかだけど、それだけじゃない? 僕は君がいいけどね」
「本当に?」
その言葉を信じればいいのについ訊いてしまう。
本当に心は少しも揺れなかったのだろうか?
彼が私をじっと見る。
「マリッジブルー?」
「そうなのかな?」
「そうなんじゃない?」
「そっか。そうか」
彼にそっと抱きしめられる。
「不安にさせてごめんね?」
「貴方は悪くないでしょう。私が勝手に卑屈になってしまっただけで」
「でも君が不安になったのは僕が告白されたのを見たからだろう?」
「それこそ貴方の責任じゃないでしょう。彼女が勝手に告白したんだから」
「まあ、そうだけど」
「何かもう大丈夫な気がする」
「そう? よかった。もしまた不安になったらいつでも言って」
「うん、ありがとう」
そう言ってくれる彼と一緒なら、これから先も大丈夫な気がした。
読んでいただき、ありがとうございました。




