ささやきに耳を傾けての花
きっと彼は私のことが大好きなんだと思う。
いつも私の話を飽きもせずににこにこと聞いてくれる。
私は普段聞き役になることが多いから話を聞いてくれるのは嬉しい。
つい甘えてたくさん話してしまうのも事実だ。
彼はささやきにまで耳を傾けてくれる。
それが有り難くもあり、時にはちょっと疎ましく思ってしまったり。
独り言を拾われるのはさすがにちょっと。
正直それは流してもらいたい。
うっかりと言葉を溢せないではないか。
きっと私は贅沢なのだろう。
「君の声が好きだし、話を聞いているのも好きだ。どんな言葉でも聞き逃したくないんだ」
おお、つい呟いてしまっていたようだ。
それは恥ずかしいやら申し訳ないやら。
「ごめん。別に責めるつもりじゃなかったの」
「うん、わかってる。ただいつものように僕が聞き取っちゃっただけ」
「うん」
それはそうなんだと思う。ただ私が恥ずかしさと申し訳なさを勝手に感じているだけだ。
彼の眉が情けなくへにょりとなる。
「ごめん、僕はたぶん君のことが好き過ぎるんだと思う」
「うん、知ってる」
彼の顔がくしゃりと歪む。
「嫌、じゃない?」
「別に嫌じゃないよ。ただ独り言を聞かれるのは恥ずかしいだけ」
本当にそれだけなのだ。
「うぅ、聞かないよ、って言えればいいんだけど、僕はきっとこれからも聞いちゃう」
「私だって聞かれたくないことは声に出さなければいいんだけど、たぶんぽろって言っちゃう」
思わず顔を見合わせる。
ふふ、と私は微笑った。
「何か似た者同士かも、私たち」
「そう、かな?」
「そうだよ。相性もいいし」
「話すのが好きなことと聞くことが好きでうまく嵌まっているから?」
「それもあるけど、これ」
私はボールペンを取り出した。
これは彼がくれたもので、ストレプトカーパスという花の絵がついている。
「みんな微妙って言うけど、私は好きだもの」
「可愛いよね、それ」
笑顔で迷わず言ってくれる。
「ね。だから私たちは相性いいと思う。これからもよろしくね」
畳み込むように言えば彼の肩から力が抜けた。
「うん。これからもよろしく」
読んでいただき、ありがとうございました。




