従順の花2
「どうして言う通りにしてくれないんだ?」
「自分でやればいいじゃない」
「君がやってくれたっていいだろう」
「お断りよ」
「まさかそんなわからずやな女だと思わなかった」
その言い方にかちんときた。
「帰る」
言い捨て、彼の家を出た。
駅に向かって歩く。
追ってくる気配はない。
従順な私しかいらないようだ。
すーっと気持ちも心も冷めた。
何であんな男が好きだったんだろう?
思わず立ち止まる。
本当にそうだ。何故あんなに何でもかんでも言うことを聞いていたのだろう?
すぐに結論が出た。
彼が喜ぶ顔を見るのが好きだったからだ。
だからこそできる範囲で彼からの頼まれ事をしていた。
今まではできる範囲内のことだっただけだ。
無理だと断っただけであんなふうに言うとは思わなかった。
何て男だろう。
きっと私のこと、便利屋くらいにしか思っていない。
ああ、もうどうでもいい、あんな奴。
再び歩き出す。
ずんずんと歩いていくから道に生えた嫁菜が私の風圧で揺れている気さえしてくる。
気のせいだけど。
それ以上は何も考えずにただただ早足で歩いていく。
しばらくすると後ろから走ってくる足音が聞こえてきた。
立ち止まることはしない。
彼であってもそうでなくてもどうでもいい。
名を呼ばれる。
立ち止まることなく歩を進めれば前に回り込まれた。
仕方なく足を止める。
無言で彼を見る。
彼は眉を下げながら口を開いた。
「ごめん。さっきは言い過ぎた」
謝られても冷えた心は温まらない。
そう言っておけば私が折れるとでも思っているのだろう。
いつまでも都合のいい女でいるつもりはない。
彼を凪いだ瞳で見据え、別れの言葉を告げるためにゆっくりと口を開いた。
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