気高い人の花
不意に甘い香りが鼻をくすぐった。
首を巡らせれば金木犀の木を見つけた。
橙色の小さな花が可愛らしく咲いている。
思わず顔が綻ぶ。
金木犀の花は好きだ。
花を集めて瓶に閉じ込めておきたいくらいなのだ。
隣から名を呼ばれる。
「あ、ごめん」
急に立ち止まったら迷惑だっただろう。
彼に視線を向けるとちょうど鞄から何かを取り出したところだった。
「はい、これあげる」
渡されたのはリボンのかけられた小さな瓶だ。
瓶を目の高さに持ち上げる。
中には優しい色合いの星形のものが入っていた。
「金平糖?」
「そう。好きなんじゃないかなって?」
「何で?」
「何となく似てない? 金平糖と金木犀って」
「えっと、似てるかな?」
瓶を掲げて金木犀の花と見比べてみる。
どうしよう、似てるようには見えない。
彼はちょっと独特の感性を持っているのだ。
彼に視線を向けて誤魔化すように微笑む。
「でも、金平糖も好き。ありがとう」
彼がほっとしたように微笑う。
「どういたしまして」
早速リボンをほどき、瓶のふたを開けて金平糖を手のひらの上に出す。
一粒口に含んで顔を綻ばせた。
「美味しい」
「よかった」
「よかったら」
まだ手のひらの上には金平糖があるので彼にも勧める。
「ありがとう」
一粒金平糖を取った彼が金木犀に視線を向ける。
「でも、金木犀って君のイメージにぴったりだよね」
「え?」
「気高い人って感じ」
「え、プライド高く見える?」
彼はきょとんとした後で笑い出す。
「違う違う。高慢じゃなくて気高い人だよ。んーと、自分の意志をしっかりと持って進んでいる感じかな」
「えー、そこまで立派なものじゃないよ」
「そういうのは本人にはわからないものだから」
あっさりとそう言って彼がそっと金平糖を口に含む。
「うん、甘い」
柔らかに微笑む彼を見て何故か私は頬を赤く染めたのだった。
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