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小さな花の物語  作者: 燈華


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あせていく愛の花

「やっぱり来ない」


時間を確かめて眉根を寄せる。

待たされることを考えてカフェでの待ち合わせにしておいて正解だった。


スマホを確認してみるが、連絡はない。

これが初めてのことではない。

何度約束をすっぽかされたことか。

もう溜め息も出ない。


蔑ろにされる度に彼への想いは冷めていった。

どんなことをされても愛し続けるほど、私の想いは深くなかった。


どんどん愛は薄れていった。

色を失いあせていく愛。

それを止めることはできなかった。


忍耐はもうとうに限界を超えていた。

こちらの気持ちに胡座を掻いてさんざん蔑ろにしてくれたのだ。


まあ向こうも今さら縋ってくることはないだろう。

私ももう別れられればそれでいい。

もうほんの少しでもあんな奴のためにエネルギーを使いたくはない。

本当は会うのすら面倒くさいのだ。


ああ、もうメールでもいいか。

他はブロックされているかもしれないけど、少なくともメールは受信拒否にはされていない。

今日のデートの約束もメールでしたのだ。


それならもうさっさと済ませてしまおう。

スマホを手に取る。


壁紙になっているのは秋明菊の写真だった。

きっとこの秋明菊のことももう覚えていないのだろう。


これは初デートの時に撮ったものだ。

何故か彼がこの花について滅茶苦茶詳しくて、この花を見つけた途端に熱心に話していた。

その姿が印象的で、心が引きつけられたので写真を撮ったのだ。

あれがなければ付き合おうとは思わなかったかもしれない。


苦い笑みが浮かぶ。

この写真ももう消してしまおう。

別れるのならあの時の記憶ごと消してしまいたい。

まあそれは後だ。


メールアプリを起動させる。

短い別れの文章を打つ。


一瞬だけ躊躇して、そのまま送信した。

そしてそのまま鞄にスマホを突っ込んだのだった。




読んでいただき、ありがとうございました。

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