吉事の花
吉事だと皆が浮かれ騒いでいる。
あれよあれよと大事になっていっている。
ただ、結婚すると告げただけなのに。
式はどこそこでやるのはどうかだの、誰々に連絡しなければだの、服は着物かドレスかどうしようだのやかましいくらいだ。
当事者の私は置いてきぼりだ。
わあわあと一緒に盛り上がっていた伯母が不意に私を見た。
「ほんと、あんたはもう結婚しないと思っていたよ」
伯母の言葉に周りがうんうんと頷いている。
「それは、私も思っていたけど……」
人生何があるかわからない。
「それなのに結婚するなんて言えばそりゃあ大騒ぎになるよ」
それは、そうか……と思ったけど、いやいやと頭を振る。
別に今時結婚しない人間だって珍しくはない。
そんな人間が縁あって結婚することになったとしても大騒ぎするほどのことではない。
「騒ぎすぎ」
「あんたは昔から淡々としているところがあるから」
「知ってる。そういうのをクールってんだろ?」
「別にそんなことはないよ」
ただ親戚に騒がしい人が多いだけだ。
でも、と不安になる。
「これ、彼が挨拶に来たら大騒ぎになるんじゃない?」
「来る予定なの?」
「そりゃ来るよ」
当たり前だ。
彼はその辺りきちんとやる大人だ。
「そうかそうか」
それを聞いていた周囲がまた盛り上がる。
まさか全員立ち会うつもりなのだろうか?
きっと止めても無駄だ。
彼のほうに伝えておこう。
「そん時はあれをやるか」
伯父が指差したのは棚の上に置かれた吉祥草の鉢植えだ。
「あれはおじさんが大切にしているものでしょ」
「構わん構わん。めでたいことだからな」
「そう」
彼は、まあ、有り難くもらいそうだ。
意外とああいうものは好きだ。
自分では買おうとはしないけど。
際限なく買ってしまいそうで自制していると言っていたことがある。
本当に真面目だ。
そういうところも好ましく思う。
彼はこの親戚たちに驚きつつも、うまく付き合っていくだろう。
特にこの伯父とは気が合いそうな気がする。
ちらりと周囲でまだ騒いでいる親戚たちを見る。
まあでもこんなに祝福してくれるのは気恥ずかしいけど、嬉しい。
読んでいただき、ありがとうございました。




