悲しみにくれるあなたの花
竜胆の花を活ける。
その花瓶を仏壇の前に置いた。
線香を上げ、手を合わせる。
目を開け、置かれている写真を見る。
まだ若い女性が柔らかい微笑みを浮かべていた。
息子の、妻だ。
息子は妻を亡くしたばかりだ。
病気が見つかった時にはもう手遅れで、みるみるうちに衰弱して旅立ってしまった。
それが先月のことだ。
母である私が息子のためにできることは身の回りの世話くらいだった。
妻に先立たれて息子はすっかりと気力をなくしてしまった。
とても仲のいい夫婦だった。
幸せそうな姿にほっとしていたというのに。
二人の間に子供はいなかった。
それがますます息子の気力を奪っているような気がする。
子供がいればその子のために奮い立たせることもできたただろう。
言っても仕方ないことだけど。
そっと息子を振り向く。
嫁の愛用していたショールを手に持ってぼんやりとしている。
きっと思い出の中を揺蕩っているのだろう。
心の中でそっと声をかける。
悲しみにくれるあなた。
今は悲しみにどっぷりと漬かっているといい。
そんな時間も必要だ。
悲しむ時はきちんと悲しむべきなのだ。
だけど、いつかはーー
私は仏壇に置いた嫁の写真に視線を向け、心の中で呟いた。
どうか息子が微笑える日が来ても許してあげてね。
読んでいただき、ありがとうございました。




