可憐の花
彼が可愛らしい女の子と楽しそうに話しているのが見えた。
むむっと思わず眉根が寄る。
可憐さはわたしだって負けてない、と思う。……思いたい。
自分で可憐と言っている時点で負けている気がする。
やっぱり彼はあの子のほうがいいのかな?
わたしみたいに自称可憐娘より、本当に可憐な女の子のほうがいいのかな?
まあ、偽物より本物がいいか。
ぷいっとそっぽを向き、ぶらぶらと歩く。
わざと彼らから遠ざかるほうにだ。
後ろからぱたぱたと走ってくる足音が聞こえる。
わたしには関係ないだろう。
歩調を緩めることも振り返ることもしない。
だけど。
名を呼ばれた。
彼の声だった。
驚いて立ち止まって振り向く。
彼が走って追いかけてきていた。
わたしの前で立ち止まった彼は笑みを浮かべた。
「はい、あげる」
差し出されたのはピンクの花が可愛らしいくじゃくアスターの花だ。
「えっと、ありがとう」
お礼を言って受け取る。
戸惑う。
彼は一体どういった意図でこの花をくれたのだろう?
わたしの戸惑いに気づいた彼が言う。
「何か君みたいな花だと思って」
「わたし、みたい?」
「そ。可愛いでしょ?」
一瞬わたしのことを言われたのかと思って動揺する。
落ち着け。
きっと花のことだ。
わたしのことじゃない。
わたしは花を見て何とか微笑む。
「確かに可愛い花だね」
「うん、君みたいに可愛い花」
「え?」
思わず彼の顔をまじまじと見てしまう。
彼は首を傾げた。
「あれ? 自覚ない? 君は可愛いよ」
これは、天然か。そうだろう。天然だろう。
あうあうと何回か口を開閉してようやく「ありがとう」と告げることができた。
「本当のことだから。それにその反応も可愛い」
やっぱり天然か。
今度こそ何も言えなくなり、わたしはうつむいて赤くなった頬を隠したのだった。
読んでいただき、ありがとうございました。




